アルゼンチンサッカーのアザーサイド
ボールを蹴る女たち(Mujeres con Pelotas)( 2014年、75分)、英語字幕付き)
「男の子が練習場をつかわせてくれない」
「練習場の真ん中に立って、男の子たちが出て行くのを待っていた」
「フィールドいっぱいに、女の子みんなで寝そべったりもした」
「FIFAの会長だって言ってるよ、サッカーの未来は女子にあるってね」
アルゼンチンでは誰もがサッカーをやる。女の子を除けば。。。
あれほど魅力的なサッカーを繰り広げ、ブラジルW杯でも準優勝、あまたのスター選手を輩出してきたアルゼンチンであるが、こと女子サッカーとなると旧態然
としているようだ。それは社会に潜む、人々の心にいまだこびりつく、保守性の表れではないだろうか。
サッカーを女の子たちの手に。社会のタブーや差別、あざけりを蹴飛ばして、女の子たちはピッチに出る。「ラス・アリャーダス・デ・ラ・ヴィジャ31」は、
ラティーロ地区のバスと電車の駅の裏にあるスラム街を本拠とする女子サッカーチーム。映画はこのチームにスポットを当てる。
このチームを率いるのは、モニカ・サンティーノ。女子サッカー推進の活動家でもある。ローリングストーンズのあの「舌」の上に舞うサッカーボールのタ
トゥーを自慢げに見せ、男の子を追い散らして女の子を練習場に招き入れる。怖いものなしの、女の子たちの公私にわたる味方。
この映画の監督ジンジャー・ジェンティルとガブリエル・バラノフスキーは、モニカとヴィジャ31に出会って、その魅力に惹かれて映画を撮り始め
た。2008年のことである。5年を超える撮影期間の間に、テーマを女子サッカー全体にまで広げていった。
映画の目的をジンジャーはこう言う。アルゼンチンで最初の女子サッカークラブをつくろうとしているモニカを支援したい。そして映画を通して、もっと女子
サッカーのことをみんなに知らせたい。「アルゼンチン文化と関係の深いサッカーなのに、人口の半分が阻害されてるなんておかしなこと」とガブリエルも言
う。
映画では女性、男性を問わず、サッカー選手やコーチ、ジャーナリスト、ファンなどのたくさんの声を集めている。女子サッカーをする者は、さまざまなあざけ
りの言葉を受けているという。「あんた、レスビアンじゃないの」「女子はサッカーのDNAをもってない」などなど。家族からさえ非難の言葉を浴びる。よく
よく聞くと、男の家族ではなく、お母さんやおばさんの言葉だったりもする。
映画より:
女子サッカーを見たことありますか?
幸いなことに、ないね。
女子と男子じゃまったく違うんだ、遺伝子の問題だよ。
女子がサッカーやってるところって、男みたいだ。
わたしがサッカーをするのを夫が嫌がってる。
審判になるための勉強をしてると言っても、男の人は信じない。
プロのクラブは女子に興味なし。
女子サッカーの教室を始めたら、みんなが笑ったんだよね。
男の子が練習場をつかわせてくれない。
練習場の真ん中に立って、男の子たちが出て行くのを待っていた。
フィールドいっぱいに、女の子みんなで寝そべったりもした。
女子も男子も技術面での違いはない。
ピッチはどこだっていい、気にしない、サッカーがしたいだけ。
FIFAの会長だって言ってるよ、サッカーの未来は女子にあるってね。
ガブリエルによれば、映画を撮り始めた頃と比べて、社会の偏見もずいぶん減ってきたそうだ。ヴィジャ31も8人のメンバーが60人まで増えた。この映画で
はチームが、ブラジル・ホームレスW杯を目指して練習する様子も伝えている。