アルゼンチンの非営利映画サイト「シネマルジェンティノ」の作品から
フリオ・ボカ、最後の旅公演の記録
フリオ・ボカ、アルゼンチンの著名なクラシックバレエ・ダンサー。2007年、アルゼンチンに始まり、アメリカ、キューバ、イタリア、コロンビア、、、と自身のアルゼンチンバレエ団とともに、キャリア最後のツアーするフリオを追ったドキュメンタリー映画。
8 Layovers: Julio Bocca(8つの途中下車:フリオ・ボカ)
2007年 ドキュメンタリー映画
脚本・監督:Ariel Ludin(アリエル・ルディン)
出演:フリオ・ボカ、アルゼンチンバレエ団メンバーほか
英語字幕付き、99分
Cinemargentinoウェブサイトより
フリオ・ボカのプロフィール:
1967年3月6日、ブエノスアイレス近郊のムンロに生まれる。4歳のとき母からバレエのレッスンを受ける。8歳になって正式なレッスンを受けたいと母親に頼みバレエ団に入る。14歳のとき、コロン劇場バレエ団の招待を受ける。そこですぐソリストとなり、1985年、22歳のときに、世界三大バレエコンクールの一つ、モスクワ国際バレエコンクーで金メダルを受賞。ミハイル・バリシニコフに、アメリカンバレエシアターに招かれ、およそ20年に渡りそこで踊り、また世界の著名バレエ団でたくさんの客演をする。長年の夢であった自身のバレエ団(アルゼンチンバレエ団)を1990年に結成、そこで芸術監督を務め、世界中を公演してまわる。2006年6月、アメリカンバレエシアターの「マノン」でさよなら公演をし、2007年の終わりに、自身のアルゼンチンバレエ団で引退公演をして、ダンサーとしてのキャリアを終える。この映画は、その引退公演間近に撮られたものである。
画面をクリックするとシネマルジェンティノのサイトでこの映画を見ることができます。
映画は八つのパートに分かれている。「1」アルゼンチンでの公演を終えたフリオ・ボカとアルゼンチンバレエ団は、「2」でアメリカに向かう。その後、キューバ、イタリア、コロンビア、ペルー、チリと巡業をつづける。イタリアでは、休暇をとって祖母の家を訪ね、家族とプールで遊び、祖母の手料理を楽しんだりもする。
コロンビアでは危険地域として悪名高いメデジンでの公演も決行。ある劇場では、仮設の客席を置く際、(近すぎて)一列目の席から「大切な脚」が見えない、という問題が起き、ステージの解体という事態に直面したりする。
ペルー、チリと巡り、最後にブエノスアイレスのルナパークでの公演に帰ってくる。そこでフリオは、往年のアルゼンチン女性歌手のヴォーカルにのせて、素晴らしいソロを踊る。
2007年に撮影されたこの映画で、フリオは40歳。アルゼンチンタンゴとバレエを融合させた踊りは、フリオのキャリア晩年の真骨頂ではないかと感じられる。若いときに、クラシックバレエ団で数々の名演を見せた踊り手が、こうして独自の、魂から湧き出るようなダンスで聴衆を魅了し、キャリアを終えるのはなんと幸せなことだろう。
映画は、フリオのインタビューへの返答や団員、スタッフとの会話をバックに流しながら、移動の際の空港や飛行機の中の模様、公演各地でのリハーサル風景、レッスン風景、舞台の設置、楽屋や舞台袖の様子、公演後の団員たちとの賑やかなパーティ風景などを流す。旅公演のリアリティがひしひしと伝わってくる。レッスンの背景のピアノ音楽、クラシックの演目のオーケストラ、タンゴ風ダンスのアコーディオン。これらの音楽が素晴らしい効果で、映像を彩る。フリオやバレエ団の踊る演目もたっぷり楽しむことができる。