文学カルチェ・ラタン
002区 アルゼンチン



ブエノスアイレスのHip Hopシーン

スペイン語とヒップホップ! なんとなくイメージが沸きませんが、南米のヒップホップ文化とはどんなものなのでしょう。黒人をルーツとする音楽で広く愛されているものに19ー20世紀のジャズがありますが、ヒップホップはその20ー21世紀版と言えるかもしれません。世界を圧巻したラップミュージック、さて南米アルゼンチンでは?

ドキュメンタリー映画「Buenos Aires Rap」をつくった監督の一人、ダイアン・ゴーグムはこう言います。アフロ・アルゼンチン人(アフリカ系アルゼンチン人)たちが国内で国民の一部と認識されたのは、ごく最近のこと。独立戦争以来、200年の歴史の中で彼らはいないも同然だった。ヨーロッパ系白人たちを中心とする白人国家から、彼らは無視され続けてきた、と言うのです。

Buenos Aires Rap(trailer 2014):監督:Diane Ghogomu, Segundo Bercetche, Sebastian Muñoz
Negro Chetto "Soy un chico en la calle" (I'm the guy on the street)
ゲットーのような場所で、子どもたちに囲まれて歌うネグロ・チェットー。ブエノスアイレス郊外なのか、田舎町のように見え、馬がいたりもする。


文学カルチェ・ラタン | happano.org
STORY
[001区 ブラジル]
リカルド・リジエス
ルイサ・ガイスラー
セルジオ・タバレス

[ 002区 アルゼンチン ]
ファビアン・カサス
ホアン・ディエゴ・インカルドナ
ニコラス・ディ・カンディア
フェデリコ・ファルコ
no.1

[ウルグアイ 003区]
アンドレス・レッシア・コリノ
オラシオ・キローガ

[コロンビア 004区]
アンドレス・フェリペ・ソラーノ
no.1

[ペルー 005区]
ダニエル・アラルコン
フリオ・ラモン・リベイロ

[チリ 006区]
カローラ・サアヴェドラ

[ベネズエラ 007区]
カロリナ・ロサダ

MUSIC
[001区 ブラジル]
アンドレ・メマーリ
エルネスト・ナザレー

[ 002区 アルゼンチン ]
ロス・モノス・デ・ラ・チナ
ベシナ
★ブエノスアイレスのHip Hop
チャンチャ・ヴィア・シルクイート

ART
[ウルグアイ 003区]
ホアキン・トーレス・ガルシア

FILM
[ 002区 アルゼンチン ]
マルティン・ピロ ヤンスキ
シネマルジェンティノ
アレハンドラ・グリンスプン
ダニエラ・ゴルデス
ジンジャー・ジェンティル
エセキエル・ヤンコ
アリエル・ルディン


[ 004区 コロンビア ]
二人のエスコバル
(ジェフ&マイケル・ジンバリスト)


TOWN
[ 004区 コロンビア ]
ボゴタの新交通網

[番外]
南米の都市のストリートアート

人口分布を見ると、アルゼンチンの黒人比率は確かに低い。ブラジルが黒人およびその混血が半数を占めるのに対して、アルゼンチンは1%を超えないとも言われています。数の少なさが現在の状況を生んだ原因の一つかもしれません。しかし、ここ最近の地球規模で起きているアンチ人種差別主義ムーブメントの中で、アルゼンチンも考えを変えないわけにはいかなくなりました。アフロ・アルゼンチン人の歴史上の認識、現代社会におけるアイデンティティの復権が見直されています。

アフロ・アルゼンチン人社会の、中でも若い層がアイデンティティと感じるような、文化的な居場所というものがこれまでなかった、そこにヒップホップがやって来たというわけです。70年代にニューヨークのブロンクスで起こり、80年代以降アメリカや世界の広い地域でヒップホップは広まりました。当時のヒップホップ・スターであるパブリックエネミーのような存在を見て、アルゼンチンのアフロたちは、これだ、これこそが自分たちの文化だと思ったようです。自分たちのアイデンティティを見つけるのが難しいアルゼンチンの「正史」とは違う、別の文化の源流、自分につながるものを見つけたということなのかもしれません。

「Buenos Aires Rap」の監督ダイアン・ゴーグムは、映画の重要性についてこんな風に言っています。「この映画は本当の姿のブエノスアイレス、そのアイデンティティ(誰がこの都市の市民なのか)のあり様を示しています。つまり移民や混血、スラム住民が混在するコスモポリタン性です。白人視線で語られたブエノスアイレスのイメージを塗り替えるものだと思っています」

Kraneando Actividad "Toxico - Desde Lejos"(toxic - from far)
2013年、2014年の始め頃には30を超えるアルバムが、ブエノスアイレスでつくられた。多くのアーティストは自分で録音し、ミックスし、ネットでそれを配信した。Facebook、YouTube、MediaFireなどが使われた。いくらかはCDとなったものもある。
Nucleo aka TintaSucia "Ritmo & Poesía - Mi Sangre Mi Familia"(Rhythm & Poetry - my blood my family)
ここ何年かの間に、ブエノスアイレスではレコーディングスタジオが、雨後のタケノコのように現れている。ベラファテリの貧困地域にあるスタジオ、エル・トリアングロは、ヒップホップのレコーディングに欠かせない場所として知られる。2013年に12のアルバムが録音されたが、最もダウンロードされたのがNúcleo aka TintaSuciaの"3.0"だ。
Conección Real "Somos" (We are)
ヒップホップは町のいたるところにある。電車、広場、あちこちの通り、、、線路際の塀からどんどん染み出した歌声が、通る車両を爆破する。
Kris Alaniz "Deja que hable" (Let me talk)
最近、アルバム‘Conexión Natural’ (Natural Connection) をリリースした女性ラッパー、クリス・アラニスは、愛するラップをボサノバやソウルミュージックなど他のジャンルと融合させる。タイトルの通り、地球環境や自然への関心をうながす内容で、だから友人たちと共にこのアルバムをつくったと言う。自分のこと、まわりの人々のことを考えながらつくった。最後には人の心を開くものになったと思う、悪いことの中にもいいところを見ようとする、これはわたしのブエノスアイレス入門書です、そうクリスは紹介している。