1
    バスでゆく
    捨てられて
    雨をはさんで黄しんごう
    ほらゴキブリ
    ほんのり青いぼくのアイリス

    2
    バショーさんっ!
    急いじゃだめだ富士山は
    夜の雨
    男は雨が好きなのに
    冬の部屋
    「ミャーッ!」

    3
    春の朝
    飛行機で
    芝刈り国め
    墓石のあいだに
    すておかれたあやつり人形
    もくもく…

    4
    時速100キロオーバー
    初めての雪ひらひら!
    「くるみ割り人形」を見ながら
    クリスマスの翌日
    売れ残りの花みたいな街角
    夜の川辺で

    5
    暖かかった3月に
    夕闇せまる空
    死んだコマドリが一羽
    都会のジャングル
    カッコウが一羽
    スーパーマーケットで

    6
    ひどいニュースを見てて
    ちょっと小便にと
    24才の誕生日
    手紙を書く
    明るい窓窓、暗い窓窓窓・・・
    嵐の去ったあと
    朝のめざめ

    7
    カフェの隅っこに
    となりの屋根に
    からっぽのキャンパス
    雨がやんだその瞬間

    8
    回転トビラの中に小さな女の子
    正午のピッツバーグ
    らんの花いっぱい!その中で
    描きかけのパステル画
    春の地域市で
    ずっと長いこと
    チョウチョがいない

    9
    自由の女神
    ユーロアジアンなニューヨーク
    目をとじて
    洗濯のあと、

10
ひとり、川辺で
あっちの街灯の下でも
受話器にあてたぼくの耳
長いすで読書
家のうらの川むこう
暑い夏の夜
小さな羽根

11
歩道の上
秋の雨
ピンクの壁紙に
日曜の朝の散歩
ゆっくり燃えて!
月のない夜

12
はつ雪や
ちょっと風くん!
小さな電話帳
11月の風
18個の百合の池に
『死の床のカミール・モネ』
老齢の女性

13
ミシガン通り
バードウォッチング
オリのそばの
リス集団お参りするのは
なんてつめたい風だ、ダウンタウン
摩天楼のあしもとで
クリーブランドのグレイハウンドで
鼻血だ!
冬のそろばん

14
解説するガイドさん
詩人の苦労多き一日
雨ふる夜
はぐれ犬
クリスマスの朝。鏡の中に
凍る滝みて
ニューイヤーズ・イブ

15
封筒の左うえの角っこ

雪あらし
雪をはらってやる
天からの雪雪雪
ATMのそばで
つららの先っぽ

16
夜がとけてく
バレンタインデー
ヘッドライトが行き過ぎる
日暮れの雪景色
クレーンのくさび


17
ハイパー・ハイク

18
アレクセイ略歴


「ぼくのほらあな」は、1996年5月、
スモール・ガーリック・プレス(シカゴ、インターネット)から出版された
Alexey V. Andreyev "Moyayama"の日本語版です。
Copyright 1996 by Alexey V. Andreyev

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