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いよいよ冬の到来。
歌によれば「猫はコタツで丸くなる」そうだが…もちろんコタツの「中」で丸くなることもあるが、私はどちらかというとコタツの掛け布団の上で丸くなることが多い。寝心地がすこぶる良いのだ。
猫は、熟睡するということがもともとあまりなく、常に危険に備えているはずなのだが(そうあるべきなのだが)、コタツは気持ちが良くて、つい無防備な状態になり、3号によると腹や舌を出して寝ていたり、寝言を言ったりしているらしい。
全く恥ずかしいが、それでもやめられないのだ。
先日もそうやってウトウトしていたら、外でバラバラというか、バチバチというか、とにかく耳慣れない音がして、目が覚めた。
見ると、小さな氷の粒がたくさん窓に当たっている。
「ああ、霰だ…そっかあ…」
一緒にコタツに入っていた3号がぼそっと言った。
その言い方はどことなく虚ろだった。
だいたい、何について「そっかあ」なのかも分からなかったし、霰とやらは窓に当たってすぐ溶けて無くなってしまうのに、何故そんな虚ろにならなければいけないのか、それも分からなかった。
実はこの頃、3号はちょっと変なのだ。
体調がすぐれないのか、と聞いてみると、そうではないと言う。
まあ確かに、晴れ晴れとしたいい天気の日は少なくなるし、洗濯物は乾かないし、外は寒くて何かとおっくうになってしまうのかもしれない。
寒々とした曇り空より、ポカポカと陽がさしている方がいいのは、私も同じだ。
しかし、そうは言っても、気候をコントロールすることは出来ないわけで、冬の間中どんよりしているのはよろしくない。
私などはその辺に転がっている紙くずなどで遊んでいればいいけれど、人間はそういう訳にはいかないようだ。
虚ろな気持ちを消し去ることはできないまでも、うまく紛らす方法はないのだろうか。
かつてより厳しい自然と対峙してきた人間たちには、さまざまな娯楽があったという。
陽の昇らない、狩りもままならぬ日々でも、集い、語り、歌い、踊って、楽しみながら生き抜いてきたのだ。
萎えた気持ちを奮い立たせるような、太鼓の響き。
力強い歌と踊りには時折、動物の鳴き声を真似た囃子も加わって、彼らが語り伝えてきた、極寒の地での智慧や喜び、自然を尊ぶ心が満ちている。
シンプルなゲームに夢中になることもある。
今となっては誰も意味が分からなくても、口ずさむことで彼らの中に息を吹き返す、歌や言葉の確かな力。特別な道具などなくても、虚ろさを追い払って顔に笑みをもたらす、すばらしい魔法を、彼らは先祖代々受け継いできたのだ。
実際の季節の冬だけではない、生きていく上で通過する厳しい時期においても、もしかしたら同様のことが言えるのかもしれない。
耐えがたい悲しみの壁にぶつかったときにも、その思いを歌で昇華させることがあったかもしれない。
きっと3号の口から漏れて出た虚しさも、彼女がまさに今、そういう時期を通過中ということの証ではないのか。
それなら、3号にとっての魔法はいったい何になるのだろう。
どこへ行けば、どうすればその魔法の力を得られるだろう。
かつての人々が自然の掟の中で、厳しさを恵みとして受け入れる術を身に付けたように、3号にもそういう瞬間がきっとあるはずだ。
しらんぷりというわけではなく、まずはこうして今まで通り、3号と共にコタツを囲むことにしよう。
いずれ、猫背でしょぼくれていることに飽きるだろう。
私の寝言やだらしない寝姿に、思わず吹き出すようなことがあれば、恥ずかしいがそれも彼女にとっての、恵みを得るきっかけになるかもしれない。
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3号よりヒトコト
同居する猫にまで心配をかけてしまうとは…こちらも恥ずかしい!?
しかし、舌を出してコタツで寝ているロドリーグは、確かに笑えます。
もちろん当の本人…本猫?は笑わせようとしてやっているわけではないんですが、何故かありがとう、と言いたくなってしまうことも。
今回は2枚のアルバムを取り上げています。(氈jの方には、カナダのケープ・ドーセットのイヌイットに伝えられる、カタッジャックと呼ばれる「のど遊び」歌が収録されています。アイヌにも見られるといわれるこの歌唱法は、息を吸ったり吐いたり、声を出したり出さなかったり、その組み合わせで作るフレーズをくりかえし歌い、2人で声のおいかけっこゲームのようなことをするものです。(団体戦もあるそうですよ!)
()のアルバムには、カナダ北西部のイヌヴィックと、カナダ北極圏のイヌヴィアルイトという地域の人々によるドラムダンスの歌が収録されています。丸い木枠にトナカイの皮を張った「キラウト」という片面の太鼓を用います。ライナーによると、近年、若い人たちがドラムダンスをやるようになってきているそうです。日本でも和楽器が若い人の注目を集めているので、何だかシンクロしてるなあ、なんて思ってしまいました。
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