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もんごろねこの ちきゅうたび うたのにおいを かいでゆく
テキスト:3号室ロドリーグ
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第3話 「置いたまま」の何か
アメリカ・インディアン その1
モホーク族の血をひくアーティスト、ロビー・ロバートソン [MUSIC FOR The Native Americans], [Contact From The Underworld Of Redboy]
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窓を開けると、網戸越しに太陽の匂いや、咲く花の匂いを感じる季節になった。
私の好きなキャットニップも青々と茂っている!本当なら上に乗っかってスリスリしていい気分に浸りたいところだが、相変わらず窓から眺めているだけである。
時折庭に出る3号にせがむと、若い枝を一房くれる。
かつては鉢植えが部屋にあったのだが、私が鉢の土を掘り返して粗相をしてしまったため、遠ざかってしまったのだ!
キャットニップという名前は、猫が好む植物ということからついたらしい。かつては人も、この植物を茶として飲んでいたらしい、と3号が言っていた。
猫がうっとりするということは、人もその茶を飲むとうっとりするのか、と聞くと、何やら本をひっぱり出してパラパラとやったあと、「人にとっては軽い鎮静剤みたいよ」と笑いながら教えてくれた。
もちろん、猫も1匹1匹感覚は微妙に違うので、全ての猫がこの植物に反応するとは言えない。
マタタビがそのいい例だ。そういえばキャットニップは、どこかマタタビに似た匂いだ。
そしてマタタビは…うまく言葉にあらわせないのだが、懐かしいと言おうか、母親を思い起こさせる、あるいは、子どもの頃に引き戻されるような匂いなのだ。
もやもやしているときにマタタビがあると、しばしその世界に酔いしれ、はたと気づくと、何かスッキリとしている、そんなものだ。
私の場合はせいぜいマタタビやキャットニップで事足りるのだが、3号、というより人はなかなかタイヘンなようである。
考える能力に優れている分、あれやこれやと気を使って、へとへとになっている。
またスッキリしようにも、どうしたらいいのか分からないらしい。
たまに3号も、私が理解不能なもやもやを抱えていることがある。マタタビを勧めてみたこともあるが、それでは解決しなかった。結局そのときは、彼女は出かけて行ったのだが、更なるもやもやとひどいアルコール臭を連れて帰ってきた。言うまでもなく、何も解決してはいなかった。
それが数日後、仕事に行った後にでも立ち寄ったのか、近所の中古レコード屋の袋を持って、いそいそと帰ってきた。もやもやはどこへやら、ニコニコして「あったよー」なんてブツブツ言っている。
その袋に入っていたのが、ロビー・ロバートソンの2枚のアルバムだった。
ロビー・ロバートソンは、アメリカ・インディアンのモホーク族の血をひいている。かつてはザ・バンドのメンバーとして活躍した彼だが、解散後ソロとしての作品では、自身のモホーク族、インディアンといったルーツを意識していたという。
[MUSIC FOR The Native Americans]は、そうしたインディアンの世界観がくっきりと描かれていながらも、すんなりと聴き入ってしまった。
太鼓やインディアン・フルートの音、また独特な歌声が、どこか遠い、しかし自分の深い部分にあるような、特別な場所を思い出させるのだ。
それがどこかは分からない。根拠なんてない。しかし、そんな場所に出会っている、と感じるのだ。単にほっとするというのでもなく、しかし奮い立たせているのとも違う…その中間にある、そっと置かれた何か。それが心地よくて、3号も私も目を閉じて聴く。
[Contact From The Underworld Of Redboy]でも、世界観は健在だが、こちらは前者より鋭い感じがする。問題意識とでも言うのか、より踏み込んだ印象がある。
おおらかなだけでなく、チリっと刺すようなメッセージが、曲と共にこちらに染み込んでくる。
どちらにおいても、彼や、彼と共にアルバムを創りあげた人々の伝言がびっしりとコラージュされている。感謝の念や愛情、祈り、問いかけ、ときに怒りや喪失感までも。
生きてこそ感じられる、あらゆる想いが音の中で展開されていく。
そして聴く方は、穏やかながらも背中を押されているのを感じるのだ。
「忘れ去ってしまったものなんてない、どこかに置いたままにしてきただけなんだ」(Unbound)
一見は後ろ向きに聞こえるかもしれない、あるいは同義に聞こえるかもしれないその言葉が、実は大切なのかもしれない。
置いたまま過ごしてきた何かが、今目の前にあるもやもやの源だったりもして。
現実には立ち戻ることは不可能でも、心の中で感じ、次に繋げることはできるような気がする。
私にとっては、マタタビで母をおぼろげながら思い出しているときが、それなのかもしれない。
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3号よりヒトコト
ロビー・ロバートソンというと、ザ・バンド時代の彼を知る方には、ソロになってからのアルバムは賛否両論あるようですが…
ロビー・ロバートソン&ザ・レッド・ロード・アンサンブルのアルバム[MUSIC FOR The Native Americans]は、テレビのドキュメンタリー番組のサウンドトラックでもあります。ワレラ(チェロキー族)、ウラリ(タスカローラ族、ヤキ族)、カシュティン(カナダ・イヌー族)他、ネイティブのアーティストが多数参加しています。トラディショナルな印象の曲や、インディアン・フルートもフィーチャーされています。
[Contact From The Underworld Of Redboy]はロビー・ロバートソン個人の名前でリリースされていますが、内容は前者よりも濃くなっていて、リタ・クーリッジ(チェロキー族)らネイティブのアーティストのみならず、ヨーロッパのアーティストも参加しています。
また、5曲目の[Sacrifice]では、オグララ・スーの居留地で起きたFBI射殺事件の犯人として不当に裁かれ、現在にいたるまで監獄で暮らしているLeonald Peltier本人のヴォイスをフィーチャーしています。
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