だれかが言うのを待っている

センダタクシ


走りすぎてく車も
暮れていく空も
誰も気付かないくらいの道のでこぼこも
佇む電信柱の影も
僕の硬過ぎる髪を揺らした風や
花をつけ終った紫陽花の緑も
いっしょくたになって自転車の後ろに消えてくので
僕はそれを覚えているために
200円で買ったしょうもないカメラを覗くみたいに
心のどっかに映しこむ

”忘れてしまいなさい”
とだれかが言うのを待っている

”どうせあなたの見るのは歪んだ鏡の虚像だから
あなたの印画紙はデタラメなんだから”

”それでも良いんだ”って僕が言うのは
きっと君もわかってるんだけど
だって今までもこれからも僕がするのはそんなことなんだから

”忘れてしまいなさい”
とだれかが言うのを待っている

ねえみんなどっかに消えてくんだよ




センダタクシ
1977年東京都秋川市(現:あきる野市)生まれ。
河遊びと児童文学を好む子供だった。
国際基督教大学卒業後、神奈川県川崎市の日本映画学校でドキュメンタリー映画を学んでいる。
HP「コーヒーと恋愛」で夢日記やその他の文章、イラストや唄を公開中。
*この詩のリーディングが"in Voice"のページ(7)で聴けます。


Copyright 2002 by SENDA TAKUSHI
Photograph Copyright 2002 by SENDA TAKUSHI
Photographic arrangement by Yoshimi

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