砂漠というのは徐々に始まるのではなく、こんなに唐突に現れるものだと初めて知った。
夕日に包まれ、あたたかみのある肌色に染まった砂漠は、離れて見ると、大きな生きもののようにも、
なだらかなオブジェのようにも、はだかの人が横たわっているようにも見えた。
砂漠のふもとまで行き、モロッコ式ミントティーを飲みながら夕暮れを味わう。目の前には砂漠のすそ。
波打つ砂に夜の色が染み込み始める。
砂漠そのものが、こんなに美しいなんて知らなかった。

やがてあたりは暗くなり、砂漠も暗闇に沈み込む。
足場も見えず、進む道も分からないので、ドライバーと、夕暮れに知り合ったモロッコの男性の後について、砂漠を登ってみる。一歩一歩、まだ温かい砂に足が飲みこまれる。
闇の中、砂丘のところどころは光の加減で青白く浮かび、影の部分は真っ暗に溶けていた。

ふもとのベルベル人のテントに灯りがともり、音楽が聞こえ始め、誘われるように
砂漠をくだる。
西洋人の旅人の女の子のバースデイパーティーが開かれていたので、仲間にいれてもらう。
ランプの灯りのもとで、みんな輪になって、ふるまわれたミントティーやケーキをいただく。
アラビアンな服を着たベルベル人の楽団に合わせて、ぐるぐる踊りだす人達。
夜が更けてゆく。 
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13. 砂と星のあいだで〜サハラ砂漠(モロッコ)