もっと些細なことで言えば、子どものころ、家にあった
母親のお菓子のレシピ本に載っていた、
ザッハトルテ(ウイーンの名物のケーキ)が気になって、
繰り返し写真や説明文を見ては、それが売られている見知らぬ街を
想像していたというのも思い当った。

妙な言い方かもしれないけれど、昭和時代のわたしが憧れたヨーロッパ。
母親のお菓子の本に載っていた、不思議な名前のケーキや、
マンガや音楽家たちの伝記の中に出てくるお城や森。
当時、山に囲まれた田舎町の小さな家で暮らしていた私にとって、
それらはあまりに遠く、きらきらしたものたちだったけれど、
今目の前にあって、食べたり触ったりできることは、感動というより、
やっぱり懐かしいと言う方がしっくりときた。
子どもの頃のわたしは、何度もウイーンに空想旅行していたのだろう。

ウイーンでは、それ以外にも、心に残っているできごとがいくつかある。
仲良くなった、韓国や中国の女の子たちとオペラ鑑賞に行ったこともその一つだ。
日本でオペラと言えば、敷居の高いイメージがあるけれど、
オペラハウスにはぴんきりの席が用意されていて、
立ち見席であれば、6ユーロ(800円前後)で見ることができた。
ただし、開場数時間前に行き、手すりにハンカチを結んで、場所とりをしておく必要があるし、
開場したら、終演まで3時間くらい立ちっぱなしとなる。
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25. 初めてなのに懐かしい街〜ウィーン(オーストリア)