外に出てみると、どこからともなく、花のような甘い匂いが漂ってきて、光と風にふんわり包みこまれる。
ほんとに、こういう場所だったんだ・・・と、ちょっと感動した。
ハワイに全く興味がなかった人でも、一度行くと、みんな好きになって帰ってくる秘密が分かった。
お店や、食べるものや、暮らす人を見る前に、ただその場所にいるだけで心地良くなってしまう。
リラックスするために絶妙に計算して作られたかのような空気感は、なんだか魔法がかっていると思った。

その反面、わたしの内面はハワイにそぐわない暗さだった。
わたしにはやっぱり旅は向いてないのではないかと、旅の終わりにそんな結論?と突っ込まずにはいられないような気持ちになっていたのだ。
旅をするにつれて、日本で生活してた時には水面下に押し留められていた、自分の嫌な部分や弱い部分が、どんどん曝されて、自分のことが相当嫌いになっていた。
旅をしている方が、日本で働いて生活しているよりストレスフルなことにも気付いていた。
私は人と関わることが嫌いな訳ではないけれど、毎日毎日新しい人と出会い、コミュニケーションをとったり、
常に次の移動先に向けて、計画を立てたり、手配をしたり、毎日の宿泊所を考えたりする、
そういった旅の醍醐味とも言える事柄に疲れて、これが旅なのだとしたら、
わたしはそんなに好きではないかもしれないと思ってしまった。

毎日帰る場所があって、一人で気ままに暮らし、働いた分だけお給料をもらい、
気心知れた人達と関わり、どこかに出かけなくても別に罪悪感を感じることもない生活。
そんな日々の方が自分には楽しめるような気がした。
そのことにもがっかりしたし、それにもかかわらず、もうこれで旅が終わってしまうのが残念でたまらない気持ちもあって、
心の中がもやもやし続けていた。
和やかで爽やかな日差しのもと、自分の内面のそぐわなさが影のように際立って、
今の自分は全然ハワイにふさわしくないなあと落ち込むくらいだった。
 (つづきを読む)

21. 旅の終わりに〜ハワイ(アメリカ)