とはいえ、ハワイにまで来て、引きこもっていた訳では勿論なくて、
どんよりとした気持ちを奮い立たせては、ダイヤモンドヘッドに登り、眼下の海のきらめきに感動したり、
リムジンやディナークルーズ船にも乗り、文字通り天国のようなビーチで泳ぎ、
アロハシャツやリゾートワンピースも買い込み、朝から大きなマーケットを見て回ったり、ノースショアで海亀を見たり、
ご利益があるという大きな石に抱きついたり、パイナップル畑を観光したり、
クリスマスを控えてどこもかしこもキラキラのアラモアナを巡ったり、ひなびて味わい深いチャイナタウンを散歩したりもしていた。
この頃に撮った写真を見ると、すっかり日焼けして、笑顔で浮かれた格好をして、
どう見ても楽しそうなので、自分のことながら驚き、
人ってやっぱり見た目では分からないんだなあと他人事のように思ってしまった。
記憶がすり替えられそうになるくらいで、自分があんなに鬱々としていたことを忘れそうにもなっていた。
確かに、暗かったのはわたしの感情だけで、客観的には楽しそうなことしか存在しなかった。
考えてみれば、当然逆のパターンもある訳で、人の気持ちはややこしいなあと思う。

ハワイの最後に、わたしはハワイの植物がたくさん見られる所に行ってみたいと思った。
海の美しさだけでなく、違う側面を見てみたかったのと、ホテルの庭や道端に咲いている花に心惹かれたので、
野生に咲く姿も見てみたいなあと思ったのだ。
大学の植物園(ということにはなっているが、実際には山)を巡るツアーに申込みをした。
ガイドについて、山の中に入っていく。
山や森(特に南国の)に行くと、いつも、自然ってこういうものだったなあとはっとさせられる。
都会で、公園や庭に整えられた植木や、小奇麗にアレンジされた花々を見て、和んだ気持ちになるけれど、それとは全く別の世界。

古い巨木に、蔦や苔がまとわりつき、お互いを吸い取り合うかのように共存している。
あちこちに、真赤だったり、つやつやとした白い肉厚の花弁をもつ、色っぽい形状の花が咲いていて、その艶めかしさにドキッとする。
生々しく、エネルギッシュなのに、清浄で静か。
 (つづきを読む)

21. 旅の終わりに〜ハワイ(アメリカ)