そして、ある夕暮れから夜にかけて、友達と二人、
エッフェル塔を目指し、セーヌ川沿いを散歩することにした。
パリの空は、朝明けと夕暮れ、ブルーとピンクの二層に染まる。
夕暮れの場合、その後は溶け合い、パープルがかった夜空の色に落ち着いていく。
川面を観光客船が行き交い、その波紋が街灯に反射する。
船のライトは、並木道の木の葉を照らし、その影が、通りに並ぶ大きな石造りの建物の壁に、
幻燈のようにゆらめきながら映る。

昼間とは全く違うムード。
これだけきっちり夜が始まると、大人の世界が育つだろうなあと感じた。
大人の世界って何なのかはしばらく、よく分からなかったけれど。
日本だったら、もっとライトアップしたりして、この影の濃淡も消えてしまうだろうなあと思いながら、
暗くなった川面に、さらに深い色の模様が揺れるのを眺めていた。

その内にふと、パリの持つ大人っぽさというのは、例えば、この川面のような黒から白の、
夕暮れの空のようなブルーからピンクの、
グラデーションの途中にある、曖昧な色を楽しんだり、
微妙なトーンの違いを見分けてを楽しむようなことなのかもしれないと思った。
実際の色についてはもちろん、感情、状況、関係性、思想なども。
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19. 色のあいまに〜パリ(フランス)