キングストンから、リゾート地のモンテゴベイに移っても、治安の悪さは相変わらずだった。
もらった地図を見ながら目的のビーチを探すが、そこに行くまでも、同じような美しい浜辺がたくさんある。
でも、ひとつ間違えると、昼間でも殺傷事件が絶えないスポットだから、注意するようにと言われ、緊張した。
帰りに寄ったケンタッキー(ジャマイカ名物のジャークチキンに対抗するからか、ジャマイカのケンタッキーが妙においしいと聞いていたので)の店内ですら、警官がうろうろしていた。

歩いていた通りの八百屋の角を曲がったら、ゲットーにつながる。
街の中に立ち入り禁止地区を抱えて生活するってどんな感じなのだろう。
日本でも、地域によっては立ち寄りがたい場所というのがそれなりにあると思うけれど、
私の暮らす札幌では殆ど意識する必要がない。
ドライバーに”never go!”と言われたその地域を、車窓からほんの一瞬覗き見た。
物騒な雰囲気だと思っていたメインストリートが平和に思えるくらいの殺伐感。
道端の人の目が鋭すぎる。
だけど、わたしはその地域に行ってみたいなあと心から思った。
どうしてこんなにもスラム街に心惹かれるのだろう。
整備された場所よりも、雑多で混沌としている場所に自然と気持ちが吸い寄せられる。
危険な目に遭いたい訳ではないし、そういう場所に暮らす人をかわいそうと思う訳でもない。
わたしの知らない生きる術を持ってる人たちや、わたしが暮らす中では決して見ることのない種類のきれいなものや、
感動的な瞬間がたくさん埋もれていることが、自然と分かるからだと思う。
けれど、興味だけで、それを覗き見る勇気も図太さもわたしにはない。
 (つづきを読む)

18. ロマンチックをつくるもの〜モンテゴベイ(ジャマイカ)