私たちの旅はタイのバンコクから始まった。
私にとっては初めての東南アジアだったけれど、あまり不安がなかったのは、
友達の友達、バンコクで暮らす日本人の男子が、空港まで迎えに来てくれて、
現地のことをいろいろ教えてくれたおかげだ。
ガイドブックを読んでいる時には、想像していなかったけれど、タクシーに乗ろうとして、
行き先を告げたら、平気で断られたり、場所を理解してもらえなかったりするし、
宿のそばまで行っても、最終的にどの建物なのかも分からない。
確かに、細い道は入り組んでいるし、建物と建物がどこで分かれているのかすら、ぱっと見ただけでは判別できない。
宿に辿り着くのが、こんなに面倒なことだとは思ってもみなかった。

彼のおかげで、どうにか宿には到着した。
バンコクなんて、宿はそこらじゅうにあるのだから、現地に行ってから決めればいいとも考えたけれど、
念のため初日の宿だけは日本から予約しておいたのだ。
最初だから冷房もついた、少しいい宿(といっても1泊1,000円くらいだけれど)。
チェックインしたはいいけれど、間違えて独房のような部屋(おそらくスタッフルーム)にたどり着いて、唖然としたり。
そして正しい部屋についても、独房とそれほど大差なかった。ベッドはそれなりに清潔そうだから安心したけれど、
バスルームを開けると、人ひとりがやっと入れるくらいの空間で、トイレの便器の真上にシャワーがついているという、日本では見たことのない造り。
バックパックを開けてものを取り出し、また閉めてパックセーフ(バックパックを施錠するための金属でできた網状のカバー)を掛けて、鍵をしめるという作業をしただけで、汗だく。
この後は、500円以内の宿に移らなくてはならないことも考えると、この先バックパッカー生活を続けられるのだろうかと、早くも自信がなくなってきた。 
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12. 雨の中、旅ははじまる〜バンコク(タイ)