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Desert USAの許可を得て、翻訳、掲載しています。


コヨーテ
The Coyote Canis Iatrans

    網:ほ乳類
    目:肉食動物
    属:Canis(犬)
    種:Iatrans

コヨーテの分布範囲

コヨーテは、アラスカ東部からニューイングランドにいたる北アメリカの全域とメキシコを南下してパナマにいたる地域のあちこちでその姿が見られます。もともとはアメリカ北西部にいた動物ですが、この200年の間、人間の進出によって起きた変化に適応するため、その領域をつぎつぎに広げてきました。現在、よく見られる地域は、フロリダ、ニューイングランド、カナダ東部です。

コヨーテの全体像

コヨーテは犬科の動物です。見た目は中くらいの大きさのコリー犬に似ていますが、しっぽはふさふさと丸みをおびていて、お尻の下からまっすぐに伸びています。沙漠の低地や谷間で見られるコヨーテは体重が9キロくらいで、20キロ以上あるものもいる他の山犬種の半分にも満たない重さです。沙漠のコヨーテは明るいグレーかなめし皮色で、しっぽの先が黒くなっています。高地にいるコヨーテは、もっと濃い色をしていて、ふさふさとした毛皮におおわれています。からだの下の方は白っぽく、しっぽの先が白くなっているものも見られるようです。
●関係種:コヨーテは8種の犬属の中の1種です。4種がヨーロッパ、アフリカ、アジアのジャッカルで、あとは、灰色オオカミ、赤オオカミ、それに人間に飼われている家畜犬の全種です。
●鳴き声:(音声ファイル:http://www.desertusa.com/june96/du_cycot.html)コヨーテは、人間が鳴き声を耳にすることができる数少ない野生動物です。夜になると、コヨーテは遠ぼえ(高い震えるような鳴き声)とキャンキャンと高音で鳴く声との、両方を発します。最初にコヨーテの鳴き声を聞いた人は、野性の恐怖におそわれるかもしれませんが、野外生活になれた人にとっては、コヨーテの遠ぼえは、アメリカ西部の歌そのものなのです。
●しっぽ:コヨーテのしっぽは敵をおどかそうとするときに使われます。攻撃体制にはいると、しっぽは太くふくらみ、水平に持ちあがります。

●耳:コヨーテの聴覚はひじょうに鋭く、餌食にする動物をみつけたりや身の危険を感知するのに使われます。耳の形と動きは、気分と身分を敵に伝えるのに使われます。
●鼻:コヨーテの嗅覚はよく発達していて、餌食にする動物や腐肉、死肉を探すのに使われます。また、他のコヨーテがテリトリー内に残していった臭いを見つけるためにも使われます。
●足:コヨーテの前足には5本の指がありますが、その内の1本はわずかばかりのオオカミ爪の指で、後ろ足は4本指です。コヨーテは地面につま先だけふれて歩く、四つ足歩行をします。

コヨーテの見わけ方

灰色オオカミはかつて、コヨーテの同類、同属(犬属)として分類されたこともありましたが、オオカミは体長も大きく、色も濃いのがふつうです。
コヨーテは歩くとき、オオカミとはちがったしっぽの上げ方をします。コヨーテのしっぽは通常、下に垂れています(足の間には入れません)。オオカミの場合は、もう少し水平に上げて歩きます。
灰色オオカミを壊滅状態にまで落としこんだ原因として、アメリカ大陸に広がったコヨーテの繁殖があげられます(コヨーテの最初の餌食になった動物です)。

コヨーテの行動

コヨーテは地球上で、もっとも適応力のある動物のひとつで、繁殖習慣や食料を変えたり、環境の違うさまざまな生育地で生き残っていく総合力を身につけています。一匹で、つがいで、群れで、コヨーテは自分たちのテリトリーを維持するために排尿行為をします。また、テリトリーを守るために、そしてコヨーテ仲間のきずなのために、また意志を伝え合うために、鳴き声を使います。

コヨーテの生命維持力

体重:7kg弱〜20kg
体長:1m〜1.5m(しっぽも入れて)
肩の高さ:38cm〜50cm 
生殖可能な年令:1〜2才
繁殖期:1月〜3月
妊娠期間:58〜65日
子供の数:2〜12匹(平均6匹)
出産間隔:1年
寿命:15年(野生の場合)
食料:小さなほ乳類、虫、は虫類、植物の実、腐肉、死肉

興味深い事実

生まれて1年目の子供は、5〜20%しか生き残れない。
時速、約65kmで走る。
コヨーテは飼い犬の種ともオオカミとも交配できる。犬とコヨーテの混合種は「コイドッグ」と呼ばれる。
人間がコヨーテを恐がる以上に、コヨーテの方が人間を恐がるものである。
コヨーテはテリトリーを守るのに、尿を使う。

コヨーテはたいがいは自分で巣穴を掘りますが、ときにアナグマの古い穴を広げて使ったり、岩だなに開いている穴を自分用に直して使ったりもしているようです。巣穴は見えにくいところに作るのがふつうですが、穴からしっぽがはみ出ていて、簡単に場所をつきとめることができたりします。コヨーテは穴を出産や睡眠に使いますが、冬眠はしません。
コヨーテは嗅覚、視覚、聴覚を連鎖して使うという優れた特性をもっているため、野生の地はもちろん、ときに大都市の周辺地域でも生き残ることができます。通常は深い奥地に生息していて、隠れたがりの性質があるため、人目にふれることはまれです。肉食動物管理エージェントによるコヨーテの管理及び駆除行動が、コヨーテの極端な警戒心や過敏な保身行動を促しているように思えるのですが。

生息地

コヨーテは南西部の沙漠地帯の生物生育地帯の全域、谷底奥深くから高い連峰の頂上にわたって、その姿を見ることができます。中でも、開けた平原や草原地帯、高いメサなどに多く生育しています。生来の生息地は草原地帯ですが、食料があればどこへでも移動します。ある研究によればコヨーテは、沙漠地帯や谷合い、低い丘の中で、16kF〜20kFより狭い範囲内に住んでいるそうです。山岳地帯に住むコヨーテは、おそらく冬の大雪をさけて山を降りるため、夏、冬別の居住地をもっていると思われます。

コヨーテ警告

コヨーテはふつうにあなたが飼える犬ではありません。- - 家畜犬たちと混同してはだめです。コヨーテはかしこく、ものわかりが早い動物です。そして危険かもしれません。コヨーテが街コヨーテになったら、家の近くにコヨーテが来ないように手をつくしてください。ゴミ箱はきっちりとふたをし、ペットフードを外に置いたり、小さなペットをひとりで放したりしてはだめです。コヨーテはなによりも猫が好きで、小さな犬もしばしば手にかけます。コヨーテを見かけたら、近所の人たちにこれを伝え、この利口な害犬を寄せつけないように手を打つよう注意します。これだけは忘れないで、決してペットフードを外に置き忘れないこと。コヨーテは家畜類には、あまり危害を加えません。ただ、家畜がまったくの一匹か小さなグループで行動しているときには、羊やポニーのような自分たちより大きな動物でも襲うことがあります。子馬の出産時は、いつも人間がそばについて目を離さないこと。コヨーテは羊や子馬を襲うことはあっても、病気だったり極端にからだが弱っていない限り、大人の牛や馬に手をかけることはありません。

食料と狩り

コヨーテは自分の領域をまわって、夜も昼も狩りをし、すばやい走りで餌食をかんたんに捕まえます。いろいろな食物を食べ、その地域がどんな食料を提供していたとしても、生きのびることができるようです。肉も魚も食べますし、それが腐っていても食料にします。ときには果実や野菜を食べ、メロン畑に侵入するとも言われています。コヨーテが羊やニワトリやその他の家畜類を殺すこともありますが、そういった家畜類を日々の食料とすることはありません。食物習性の研究では、本来のコヨーテの食料として、シカ、ウサギや地リスやその他の齧歯(げっし)類(ネズミなど)、虫、そしては虫類も、果物、野生のイチゴなどをあげています。コヨーテはその場主義の肉食動物で、ウサギやリスのような小さなほ乳動物を捕まえるのに、さまざまな方法を使います。単独で小さな餌食を狩る場合でも、もっと大きなシカやポニーに対してするように、徒党を組むこともあります。コヨーテは自分の餌食を追うのにすばらしい嗅覚を使いますが、20〜30分もあとをつけたあげく襲いかかることもあります。長時間にわたる狩りでも、スタミナにおいて優れていて、獲物が疲れはてたところを襲いかかります。

繁殖

1月になってつがいの季節がはじまると、オスのコヨーテ数匹がメスを取り囲みますが、メスは一匹のオスとしかつがいになりません。沙漠コヨーテはオスとメスで、1月、2月の間、いっしょに旅をして、その後つがいになることもあります。メスは、食料の豊富な4月か5月に、年に一回の出産をして3〜9匹の子供を生みます。妊娠期間は63日から65日。子供は生まれたては目が見えませんが、14日後くらいには目が開いて、その2、3日後には巣穴からはい出てきます。5〜7週間が授乳期間で、その3週間後には半固形物を食べはじめます。オスが食料を子供たちのために食べもどしている間も、母コヨーテは父親を穴の中に入れることはしません。子供たちは生後6〜10週間くらいまでは巣穴で暮らし、その後母親について狩りに出かけるようになります。家族はしだいにばらばらに行動するようになり、秋までには子供たちもひとりで狩りをするようになります。1年の内には、それぞれ独立して、自分のなわばりをつくり、自分の尿で臭いづけをします。

保護

コヨーテは狩猟用でない野生動物の中でも、長い間、もっとも論議を呼んできた動物のひとつです。酪農関係者たちは、いかなる手段を使ってでも、実質上、可能性の上で、家畜の損害を減らす必要があると主張しています。1891年に最初のコヨーテ管理計画がカリフォルニアではじまり、50万匹近くのコヨーテが、3,000万ドルの税金をつかって駆除されたと報告されています。環境保護論者たちは、コヨーテが自然のバランスを保つ上で必要であるとかたく信じています。狩猟の人々の中には、コヨーテのせいで狩猟種の減少があると感じている人もいます。生物学者は家畜やニワトリなどを襲う野生動物は駆除されるべきだが、ネズミなどの有害な齧歯(げっし)類を主な食料としているコヨーテは、種としては必ずしも有害ではないとし、またコヨーテの繁殖が他の野生動物の固体数に対して、長期的な影響をおよぼすこともないと認めています。というわけで、論争はひどくなるばかりです。コヨーテは最近になって、カリフォルニアで、非狩猟用動物に分類されました。1年を通じて、狩猟許可制度のもとで管理されています。絶えまない狩猟やコヨーテ数を減らそうとする非常な努力をよそに、アメリカ南西部では「小さなオオカミ」たちの沙漠地帯をつらぬく歌声が、きょうも響きわたっていることでしょう。

-- A.R Royo

●コヨーテのムービー
http://www.desertusa.com/june96/du_cycot1.html
姿を見せることの珍しいコヨーテを見ることができます。
(Quick Time Movie: 589Kバイト)
音声解説:「コヨーテは人に見られるのがきらいなので、すぐに逃げてしまいます」

*このページの原文は:http://www.desertusa.com/june96/du_cycot.html

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