わたしはぎこちなく立ち上がった。マリカもしたがった。わたしはマリカの腕の中に身を預け、マリカの髪がわたしの顔をおおった。マリカがハンガリー語で何か言った。


 今日、ヴァシーレから手紙を受けとった。わたしはルーマニアのSに招かれた。ハンガリーの国境からすぐそばの町だ。
 「いろんな作家が来ることになってる。君にぜひ来てほしいと思ってるんだ」 そうヴァシーレは書いてきた。「君はすばらしい詩の賞を受けることになってるんだ。(君に知らせるべきじゃないんだけどね) そうなったら、ぼくのところで君のアンソロジーをフランス語とルーマニア語のバイリンガル版で出版しようと思ってる。そうだ、忘れるところだった。ハンガリーの編集者が最近、ぼくに連絡してきた。その男は君に手紙を書くつもりなんだ。その編集者は君の最新の小説をとても出版したがっているんだ。。。」


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(*1) ヴィクトル・ユーゴーの詩の一節。娘を亡くしたユーゴーがその墓を訪れるという詩で、大意は、<夜明けにわたしは家を出る。きみはわたしを待っていてくれるね。>
(*2)「死は、いつも死は、、、/曇った/鏡のなか/血の格子に囲まれて」
" La mort, toujours la mort…/ dans les miroirs/ opaque/ avec ses barreaux de sang..."
"Death, always death... / in the opaque / mirrors / with their bars of blood..."

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