その日はメキシコ滞在中、珍しく空は厚い雲で覆われ、視界の見通しも悪かった。
もやのかかった山の中、ガードレールもない、ぐねぐねの道を、タクシードライバーはスピードをあげて走る。
1時間半くらいたった頃、霧深い路上に門のような柱が現れ、
そこに、目と口にだけ穴の開いた、黒い覆面をつけた門番が立っていた。
タクシーから降り、門番の後について村へ入る。
次に現れたのは子どものサパティスタだった。
門番を見たときから思っていたことだけれど、サパティスタの覆面は、想像していたものと結構違う。
ニット帽の目鼻をくりぬいたようなもので、素材もあたたかみがあり、
てっぺんにカラフルなぼんぼん飾りがついていたり、なんだかポップなのだ。
子どもに関しては、かわいらしいとすら思ってしまった。
大人も穴からのぞく視線がやわらかく、攻撃的雰囲気はない。

それでも、入り口付近の小屋に連れて行かれ、覆面集団に囲まれた時はさすがに緊張した。
ラッキーなことに、連れの1人が、少しスペイン語を話すことができたので、面接は殆ど彼に託された。
わたしは、サパティスタ達は、自分たちのことを他国の人に知ってほしいのか、
それとも知られたくないのかが分からなかったので、
尋ねてもらったところ、彼らは、自分たちの存在を世界中の人に知ってほしいとのことだった。
それなら、村を見せてもらえたら、日本に戻ってから、みんなに伝えるということを、
壁に貼ってあった世界地図を指さしたり、身振り手振りで、みんなで一生懸命伝えた。

覆面集団は頷いたり、思案しているようだったけれど、とりあえず第1面接はパスしたらしく、
二つ目の小屋に連れて行かれた。
そこでもまた質問等された結果、どういう具合なのか、私たちは村に入ることを許可された。
 
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24. 霧の中の村と自由〜オベンティック(メキシコ)