眠たくなるような日差しのもと、いろんな場所と季節の記憶が重なり合って、一瞬自分がどこにいるのか分からないような気分になる。
この同じ時間にインドのガンジス川に向かう通りでは今も人だかりができているのだろうか、
アフリカのサバンナでは象の群れが歩いているのだろうか、
ベトナムの交差点ではひっきりなしにバイクが・・・などと旅してきた国の風景が頭をよぎり、世界のカラフルさを改めて考えずにはいられなかった。

更に歩いていくと、廃墟となった、灰色の石造りの教会が現れる。
1755年の大地震によって、崩壊したままの姿。
飛行機雲が幾筋も交わる青空のもと、輪郭だけとなった姿を晒している様子は、なんだか清々しかった。
教会に登り、つながる展望台へと向かう。
そこからは、リスボンの街並を見下ろすことができる。
いくつもの煉瓦色の瓦屋根が続き、その端は、輝きを放つ海と空に溶けている。
眺めていると、気持ちがどこまでも広がって行く気がする。

いつでも、すぐに来られる気がするのにな・・・
日本で生活していた時、旅することは、どうしてあんなに大変だったのだろう。
どこも全部つながっているのに。
通信技術は驚くほど発達して、リアルタイムで、遠く離れた人と会話をしたり、異国の風景を画像で見ることもできる。
それなのに、実際に体を移動させるには、どうしてあんなにお金がかかったり、面倒な手続きが必要なのだろう。
だけど、その時、お金や時間の問題云々を超えて、もっと直感的に、
旅することはそんなに難しいことではないし、行きたい所へ行って構わないんだという思いが、湧き出てきた。
いろんな言い訳をしそうになる時もあるけれど、あの時リスボンで思ったことが本当のことなのだと、今も思う。

15. 好きなところへ行けばいい〜リスボン(ポルトガル)