シャイで放浪気質、変わり者だけれど、自立していて優しいボッツ。
彼がこの村に宿を作っていなければ、私たちもソンも、カップル達もこの村に来ることはなかっただろうし、
出会うこともなかっただろう。
恥ずかしがるボッツに頼んで、ボッツが昔所属していたパンクバンドの映像を見せてもらう。
モノクロの画面の中で、多分30年近く前の、ボッツが頭を振りながら、マイクにがなりたてていた。
マイクにしがみつく彼は、ずいぶん若かったけれど、今と変わらず、どこかあてどなく、ナイーブな印象だった。
日差しを浴びて静まりかえった、白昼夢のような風景と、浮世離れしているともいえるボッツの宿。
旅の中でもさらに非日常的な印象の時間だったように思うのと同時に、いまだに身近にも思えてしまうのは、
暮らす場所の距離や生活スタイルとは関係なく、ボッツやソンに、どこか共鳴するところがあって、
近所の友達のような親しみやすさを感じたからだろう。
流れの中で、ほんの一瞬だけ交差し、楽しかった印象だけ残してまたどこか、お互いの道を行くということ。
いろんな町に、会いたい人がいるということ。
そのことだけでも、充分幸せなことなのだと分かってはいるけれど。
思いを馳せるのと同じスピードで体を移動させ、
会いたい人に気軽にふらっと会いに行けたらどんなにいいだろうと思わずにはいられない。
11. 小さな白い村で〜カルタヒマ(スペイン) 後編