そして、たどり着いたのは山に囲まれた小さな村だった。
歩いてすぐに一周してしまえる。
真夏の日差しの下、立ち並ぶ家はすべて真白で、村全体が陽光を浴びてまぶしかった。
シエスタ(昼寝のための休息時間)の時間帯だからなのか、通りを歩く人も見かけず、物音も聞こえない。
その中の一軒がボッツの家であり、今夜わたしたちが宿泊する宿だった。
ボッツが自分で内装を手がけたという、モロッコ風のリビングは涼しくて、居心地がよかった。
ボッツの入れてくれたお茶を飲みつつ、ソンに話しかけてみる。
「どうしてここに来たの?」
「・・・分かりません・・・。ロンダに・・・。・・・でもここは、好きですね。」
少し、途方に暮れたように答える彼。わたしたちと全く同じ心境だ。
とりあえず、郷に従って、わたしたちもシエスタをすることにして、各自の部屋で夕方まで眠った。

目が覚めたら、ボッツが上半身裸で、頭にバンダナという、やけにワイルドないでたちでディナーを作ってくれていた。
彼の料理の腕前はなかなかで、やさしい味の家庭料理は、外食に疲れていたわたしたちにはとてもありがたかった。
「日本人に、スペイン料理はtoo much だと思うから、あっさりめにしたよ。多かったら残してね。」
と気遣いの言葉も。
 (つづきを読む)

10. 小さな白い村で〜カルタヒマ(スペイン) 前編