ダルエスサラムからバスで10時間もかけてやってきた、中継地点の街から、サファリの地帯まで、更に車で8時間くらいかかるという。ボロボロの日本製のワゴン車に乗り込み、でこぼこの道を揺られながらドライブがスタート。
バスから見た風景も同じだったけれど、基本的に茶色い草原がひたすら続き、アフリカは茶色いというイメージがわたしの中でますます育っていった。
けれど、このドライブにわたしはだんだん夢中になってしまった。
時々、派手な布をまとった人々がぽつんぽつんと現れ、その姿が風景に映えてとても美しい。
岩や木々も、ひとつひとつが個性的で、これまでアジアで見てきたものともまるで違う。

そして、ここからサファリの区域に入ると言われた場所も、これまでドライブしてきた道のりの続きといった様子で、見渡す限り草原が続いているだけだった。
掴みどころのなさに、ぼんやりしていると、ドライバーが指をさすので見たところ、車のすぐ脇に、3匹の雌ライオンがくっついて寝そべっていた。
その姿は、まるで大きな猫といったかんじで、ほのぼのとしていてかわいらしかった。
その後に見た駝鳥は、その大きさにも驚いたけれど、突然車の正面にしゃがみこみ、砂で羽繕いを始めた姿があまりに愛らしくて見とれてしまった。

動物達がみんな、動物園で見るものと筋肉のつきかたも違うし、動作がいきいきとしていて、 その世界にどんどん引き込まれていった。
わたしは、もっと動物がそこらじゅうにいる風景を想像していたのだけれど、実際には広大な草原の中に時々ちらりと現れるくらいだ。驚くほど視力の優れたドライバーが、わたしには点にも見えない、遥か先の草陰に潜む動物を発見しては、連れていってくれる。
象ひとつとっても、耳をぱたぱたさせながら、泥浴びをしている象や、群れから離れ、気が触れた様子で車に向かって来る象、まだうまく鼻を使えないあどけない子象や、100頭ほどの集団などいろんなシチュエーションを見ることができた。
それ以外にも、猛スピードで走るイノシシや、ヒヒの親子や、インパラの群れ。しまうまと一緒に行動するヌー達。 
 (つづきを読む)

6. 恋をした国〜セレンゲティ(タンザニア)後編