タンザニアに向かう飛行機が離陸し、外を眺めると、ほんの一瞬、都市のような風景が見えた。と思ったら、窓の下はすぐにまっ茶色になった。それから延々と続く、ひたすら茶色い景色。
山脈は見えるのだけれど、表面に緑がないので、輪郭が剥き出しになっている。
初めて見る異質な風景に、まるで別の星を見下ろしているような気分になった。

タンザニアの首都、ダルエスサラムは、想像していたよりも都会だったけれど、たくさんの人から治安の悪さについて聞いていたので、昼間の大通を歩く時ですら、びくびくしていた。
アフリカの人には陽気なイメージを抱いていたけれど、スーパ-ハイテンションなインド人達と過ごした後だったので、
街の人々は落ち着いていてクールに感じられた。
でも、ダルエスサラムから、次の街に行くため長距離バスに乗ってみると、周りの座席のおばちゃん達はみんな優しく気を配ってくれて、少しづつ気持ちがなごみ始めた。
乗車の途中、草むらで降ろされ、みんなわらわらと外に出る。
わたしの背丈ほどもある草の生い茂る原っぱのあちこちで乗客がトイレタイム。お互い顔だけ見合ってたり。
なんともおおらかだけれど、バスに戻ると、人数確認もないまま即出発。のんびりしていたら、草原に放置されてしまいそうだ。

そうして着いた町では、ホテルにチェックインして、ポシェットだけ持って外に出ようとしたら、ホテルマンに全力で止められた。どんなに小さな荷物でも、持って出ると危険だから、手ぶらで行きなさいとのこと。
ポケットに小銭だけ入れて外に出てみたものの、何メートルも先からも、たくさんの視線を感じて落ち着かない。
出歩く気もなくなって、ホテルのそばに立ったまま、町行く人を眺めることにした。
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6. 恋をした国〜セレンゲティ(タンザニア)前編