ジョン・ミューア著「カリフォルニアの山々」1894年出版より
イラストレーション=ジョン・ミューア


クロウタ水鳥について

水に潜るクロウタ水鳥の絵

潜ってエサをとるクロウタ水鳥






滝の中のクロウタ水鳥の絵


滝の中に入るクロウタ水鳥

クロウタ水鳥(the Water-Ouzel)は、シエラの滝のあちこちでよく見られる鳥で、ミズツグミ(Water Thrush - Cinclus Mexicanus, Sw.)の名でも呼ばれています。明るく楽しげな声で歌う愛らしい小鳥で、大きさはコマドリくらい、青みがかったグレーのシンプルな防水服を身にまとい、頭と肩にチョコレート色のかざりをのせています。ふっくらとなめらかな外形をもち、滝つぼで水にうたれて身は小石のように引きしまっています。 流れるようななめらかな輪郭線から、がんじょうな足とくちばし、羽先、ミソサザイ風の上向きの尾が飛び出しています。

10年にわたるシエラの探検の中で、滝という滝で、クロウタ水鳥に出会いました。滝が氷の峰にあろうと、あたたかな丘にあろうと、ヨセミテ渓谷の奥深いところにあろうとです。小鳥には寒さが厳しい渓谷でも、他の仲間が住んでいないようなところでも、豊かな滝水さえあれば暮らせる鳥なのです。滝や急流のある澄んだ流れを見つければ、その相棒のクロウタ水鳥を必ず目にするはずです。水しぶきの中を飛びまわり、泡だつ水の渦に飛びこみ、木の葉のようにぐるぐると水に打たれ、いつも元気で疲れ知らずで、でも自制心もあり、やたら人間を避けたり、寄って来たりもしません。

この鳥は、山の水の恋人、水につどう歌鳥です。水しぶきの岩場や水際の場所が大好きで、まるで蜜をもとめるハチたちのように、日のあたる草地に群れをなすヒバリたちのように水辺に集まります。さまざまな山の鳥の中でも、この鳥ほど、一人旅のさびしさを慰めてくれたものはいませんでした。冬でも夏でも、愛らしく、陽気に、太陽のように自由に歌いつづけ、水の流れさえあればご機嫌で他にはなにもいらないといった風なのです。水が歌えば、この鳥も歌います。暑くても寒くても、穏やかな日も嵐の日も。どんなときも、ちゃんと水音に調和させて歌い、夏の干ばつや冬の流れの少ないときには低い声で歌います。でも歌をやめてしまうことはありません。

クロウタ水鳥は他の鳥とも自分の仲間とも、コーラスで歌うことはなく、ただひとつ、水音とだけいっしょに歌うのです。わたしはよく、滝の水しぶきのまっただ中で、この鳥が歌っているのを見ました。水のごう音で、その歌声はかき消されてはいましが、くちばしと身体の動きで、歌をうたっているのが見てとれました。

冬の間、水の流れが雪の上に線を描くようになると、流れは凍る寸前になり、嵐が来てその上にまた雪が降って、水がまったく流れなくなります。そして水は不透明な青黒いぬかるみになっていきます。そうするとクロウタ水鳥は、ぬかるみの下の川の本流の深いところまで潜って行ってエサをとるか、貯水池など他の水場を探しに行ってエサを調達します。


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