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著者メアリー・オースティンについて

メアリー・オースティンは、1868年イリノイ州カーリンヴィルに生まれました。後にカリフォルニアに移り、そこで出会った自然や土地や人々のことを題材にして、小説、エッセイ、子どもの本などの作品を生み出しています。ナチュラリスト、フェミニストであるオースティンのものの見方は、子どものために書かれた「インディアン・テイルズ」にもよく現われていて、いまのわたしたちの感覚とかわらないか、それ以上の新しさをもっています。

たとえば、「インディアン・テイルズ」の中で、ストーリーテラーとして登場する籠女(かごおんな)という存在。このインディアンの女性は、アランという白人の少年をシエラネバダの自然や人々に起こった物語へといざなう案内人であり、力強くてやさしい野生の人です。この女性像ひとつとっても、心うきたたせ頼もしい気持ちさせられる、いまのわたしたちがもっていない女性のモデルのような気がします。

自然にたいしても、人間と自然を対立する存在として捉えることの多い西洋的な考えとは違い、エコ・フェミニズム的な、あるいはネイティブ・アメリカン的な感性をもっているようです。この「インディアン・テイルズ」の中でも、川や氷河、松の木やコヨーテなどの物語をかたることで、人間にとっての自然の意味ではなく、人間とは独立して存在する自然自身の物語を引きだし紡ごうとしています。

「インディアン・テイルズ」はパイユートの人々から聞いた話をもとに、物語が編まれていますが、人々の描き方も、やたら神聖化したりしないで、インディアンの人にだって怠けものも、悪人も、弱虫もいるという当然のことがさらりと表されています。

オースティンは、1925年にカリフォルニアからニューメキシコのサンタフェに移り、ジョージア・オキーフの絵にも描かれている、この地方独特のアドービれんが(泥とわらの混合物を成形して日干ししたもの)の家に住みました。そして1934年、そこで亡くなりました。オースティンが残した作品は、32冊の本と、さまざまな所で書かれた200を超えるエッセイがあり、写真家アンセル・アダムスとのコラボレーション(20代のアダムスのデビュー作)『タオス・プエブロ』もあります。

(訳者だいこくかずえ)

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