穏やかな天候の日々は、他に比べようもないくらいメサは静けさに満ちている。でも夜になると、やわらかな哀調を帯びた声が静寂を破る。遅い午後にはアナホリフクロウが、一列にならんだ四羽か五羽の妖精みたいなヒナを連れて、すみかの小山で目をぱちくりしているのに出会うだろう。交尾の季節であれば夕暮れどきにホッホーという鳴き声はさらにやわらかく甘く、絶え間なくなる。アナホリフクロウの鳴き声と夕暮れのメサに落ちていく日を切り離すことはできない。もし春の燃える落日の金紫の光の波が、音の波に変わったなら、花々の頭上に響き渡るフクロウのデュエットとさぞかし調和することだろう。まだ日が落ちる前であれば、フクロウの羽が舞い獲物に飛びかかるところを目にするだろうし、暗くなってからなら、ハタハタと小径を飛び去っていく羽音を耳にするだろう。多分、夜起きていると聞こえてくる、闇を刺す切れ切れの悲鳴はノネズミかカンガルーネズミが、このやわらかな声の奪略者たちに襲われているところだろうが、赤ギツネの日々の稼業による可能性もある。

 赤ギツネもコヨーテも夜の闇を自在に動きまわる、狩り好きの殺し屋たち。キツネはあまり饒舌ではないが、コヨーテは口数が多く、夜の闇に二十の音を同時に響かせながら、噂話や警告、悪態をついたりする。どちらも足並みは軽く、歩くときの接地面が小さいので、足元で草をかさこそいわせたり小枝を踏みつけたりしないで闇の中を近づいてきて、一人旅のキャンパーを光る目や間近な吐息で驚かせることもある。コヨーテはメサの主のような存在なので、人が黒くて長い道具(一キロ先から牙をむくことができる)を手にしていないか、確かめにやってくるという大胆にして好奇心旺盛なところがある。とはいえアナグマほど大胆ではないし、またつむじ曲がりでもない。この足の短い肉好きの方は、薄曇りの雲が垂れ込めた天気が好きで、友もいなければ敵もなし、子育てもしない。もしタカやカラスが夕飯にありつこうと後をつけているのを知ったら、憤慨するに違いない。でもアナグマは見上げたり左右の視界に目配りするのが不得手なのだ。曇った午後にはホリネズミやリスの巣に向かって、鼻をクンクンさせながら突進し、誰と行き会っても我が道をゆずることはまずない。アナグマは漁り屋であって、公明正大なスポーツマンではない。巣の盛り土までたどりつけたときは、まっしぐらに居室につっこみ、鋭い鈎爪のある広がった手足をバタつかせて、波間で泳ぐ人みたいに砂を撒き散らす。それなりの追跡者ではあるが、それほどすばしっこくもなく、こそこそもしていないので、飛行中の小さなタカや怠け者のカラスが、多分一、二羽ずつ、アナグマを偵察していて、獲物に向かって舞い降りてきたりするのだ。

 巣穴族も間抜けではないから、薮の下に隠した巣には出口をいくつもつくっている。アナグマが巣穴に入ってきたとき、フサフサ毛並みの住人の中の俊敏な者たちは裏口から逃げ出し、タカが手際よくそれを仕留める。たぶんカラスは何も得られないだろうが、好奇心を満足させ、アナグマが隠した種を横取りするくらいのことはするだろう。ひとたびアナグマの穴掘りが始まると、カラスたちは無闇にあたりをうろつきまわる。小さな灰色タカは一見そうは見えないけれど、もっと賢いやり方、出口付近をゆっくりと飛んで獲物を待つ。


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