野生の木の実や果物がいつ熟すか、常に気を配っているのは簡単なことではない。植物の成長の経過はとても控えめで、大切な瞬間になると必ず、他の植物に開花の最盛期がやってくる。野生のアーモンドでバラ色に染まった草地が、ルピナスのハッとさせられるブルーに変わっていく瞬間を誰も捉えられない。あっちに一本こっちに一本と開花を見つけた翌日、草地中が風に波打ち、気高く青く染まっているのに気づく。ルピナスの魅力のひとつは、ふさふさした花の頭を、近くに咲いている他の花々とは関係なく、絶え間なく震わせていること。花の冠のそばまで行けば、背の高い茎がこっくりこっくりほんの少し頭を揺らせている。でも草地の遠くから見ると、風のない日でも紫の花畑はぶるぶる震えているのだ。

 真夏から霜の季節までの間、草地の主たる色調は明るい黄金色で、ゴールデンロッドが花色を落としながら次々に素晴らしい変化を見せ、その色彩プランは舞台の場面転換より見せ場がある。わたしの家の窓の下では、クレオメの花がいっせいに開花してやわらかなクモの巣を張った見映えとなり、毎朝窓辺でしばしそれを見て過ごした。ところがある日、花も葉も落として組細工のような見映えになったわら色の枝茎を見つけて驚いた。それが数日の間に起きたことか一、二週間のことだったのか、わからないのだ。キュウリの植え時、キャベツの蒔き時は園芸年鑑にも明記されているだろうけど、ナボトの草地では決まった種蒔き時も開花期もない。

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