南には青い山並みがそびえ、その青さはソリチャとウラシマツヅジの樹木の密生のせいだが、そこにはシカが住み、ショショーニの土地の南端となっている。東方向に土地は遠くまで広がっていて、断続的な山並み、急勾配の谷の荒れ地、雲つくような巨大なメサがつづき、果てしなく東へ東へと伸びていき、その端がどこなのか誰も知らない。

 ここはオオツノヒツジやワピチ、オオカミの土地、ハゲタカが巣作りする場所、木々が雲に育てられる土地、そして野生動物が水なしで暮らすところ。そしてなによりも、クレオソートとメスキートの土地である。メスキートはこの沙漠地帯で、神の最高の発案物。どこにでも見られ、棘をはやして、ずんぐりとして、かたまって生えている、鉄の根っこを持つ植物だ。息の長い風が風通しのいい谷を渡り、風に運ばれた砂がどんどん下枝を埋めていってピラミッドの砂丘となり、そのてっぺんからメスキートの枝が青々と繁茂している。吹きだまりの数メートル下までは、雨も届かないように見えるが、幹はときに地下1メートルの深さまで根を伸ばし、ナラの木のように耐性がある。ショショーニの土地では、大きな幹が必要な場合、掘り出して手に入れる。南寄りの立地で砂地の場所だ。卓上台地より高いところでは、ずんぐりしたジュニパーやマツがそれぞれかたまって生えていて、こんもりと緑の群れをつくっている。その群れの間に、間をとって、羽毛のある背の高い草の塊が点在している。

 空間的余裕、時間的余裕、これが沙漠丘陵地の特質である。樹木は完成形にまで樹形を育てあげる。どの植物もそれぞれ自分の完成形を持っている。混み合った草原でもさもさと繁殖しているような悪臭のする草のたぐいが、この開けた空間で繁茂することはない。インディアンと共にある期間暮らせば、インディアンか野生動物がこの果ての地に育つ植物の効用を教えてくれるだろう。

 土地の性質がここでの生活の仕方を決めているので、それ以外のやり方では何ものも生きられない。ショショーニの人々はこの土地の木々のように暮らしている。互いに距離をとって空間を確保し、夫婦や家族単位で稀少な泉のそばに枝で編んだ小屋を設置する。二つ以上のウィキアップ(枝編み小屋)があれば、大所帯ということになる。ショショーニの小屋は簡単な造りで、それはシカのえさ場や種の実りを追いかけての旅暮らしのせいだが、ここに住む他の野生動物と同じように、それが淋しい暮らしというわけではない。


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