ホワイト・マウンテンの南にあるワバンの丘の上に、風でかしいだヒマラヤスギが低く平たくテントを張って、隠れ家のようになっている場所があって、雪の季節、野生の羊がそこで冬越しをする。それは木こりや金鉱探しの男たちが言っていた話だけれど、ポケットハンターは自らそこを体験していた。冬のはじまり頃、ここを行く人はみな突然の大嵐を警戒しているが、昼に丘を登り始めたポケットハンターは、いちばん近い道を選んで山越えをしようとしていた。徐々に寒さが増してゆき、降り始めた雪は前が見えないほどの大降りになってきて山道を消し去り、あたり一面を雪野原にした。雪の吹きだまりで目標物が隠され、足早に迫る闇が降り積もる雪を覆い始めた。ポケットハンターは自分がどこにいたかわかっていたさ、と言うけれど、どこなのか正確には言えなかった。三日前には水のほとんどないデス・ヴァレーの西丘陵で、くるぶしまで砂に埋まっていたのに、今はワバンの丘でひざまで積もる雪に足を浸けていた。どちらの場合も、男のしたことはできることをする、それだけ。つまり歩き続けることだ。いずれにしても雪嵐の中で、できることと言えばそれくらい。それは動物のもつ生存本能といってもよく、男はこれまでの人生の中でそれを養ってきたので、ヒマラヤスギの隠れ家にたどり着くことができた。そうやって男は暗くなってから四時間後にそこを見つけ、羊の群れの荒い息を耳にした。「こんな中でまともにものが考えられるものなら、嵐で足止めをくった羊飼いと哀れな羊の群れに行き会うとはと、さぞかし驚いたことだろうな」とポケットハンター。が、深く考えることもなく、ふかふかの羊毛に挟まれて暖をとり、羊に埋もれて深い眠りに落ちた。夜中に羊がもぞもぞと動けば、男も眠りの中で動いて羊にすり寄り、嵐が去るまで眠った。