4. ポケットハンター

その男と最初に会ったときのことはよく覚えている。燃える夕焼けの中、白ギリアの花々の婚礼を見ようと歩いていると、セージが燃えるときの独特の匂いを鼻腔に感じた。彼方から流れてきたその匂い、普通はインディアンの集落が近くにあることを知らせるものだけれど、平坦なメサにいて、そこからはダイアナ・セージより背の高いものは何ひとつ見えない。セージの上には夕闇が広がり、白い三日月が浮かんでいて、一筋のゆらめく煙が上がっていた。それを追っていったら、薮の下でくつろいで野営をしている「ポケットハンター」と出会ったのだ。男は炭火でコーヒーポットを温め、夕飯はフライパンの中で食べるばかりに仕上がり、おしゃべりでもしたいような面持ちで、砂地の上にあぐらをかいていた。自分の荷ロバが、与えられたセージよりもっと水気のあるものを求めて、足かせを外してうろうろしていても、気にもとめていなかった。

 その後、風吹く山あいの道や沙漠の丘陵地の水穴のそばで、たびたび男に出会うようになり、その暮らしぶりがみえてきた。小さな、腰のまがった男で、野生の小動物が保護色で身を守るように、顔つき、態度、話し方に目立った特徴がなかった。男はいったい何を着ていたか、覚えているのは服の至るところについた調理のときの焼けこげくらい、それから口をあけたままの可笑しな様子、近くに寄って見るまでは、頭のからっぽな人間かと思うかもしれないが、男はいつも何かしながらふんふんと鼻唄を歌っていたのだ。男は遠くまで、長いこと、旅をしてきたが、調理用具は簡素この上なかった。豆を煮る鍋、コーヒーポット、フライパン、パンこね用ブリキ缶(ロバに餌やりが必要なときもこれを使った)、これだけでこのあたりの西部一帯を半周して戻ってきた。わたしたちが知り合った最初の頃、丘陵地での食事には何が適しているか、男はこんな風に話した。ベタベタしないもの(「鍋を荒らす」から)、「汁っ気」のないもの(包みやすいように)、それと腐りにくいもの。銃は使わず、ウズラやハトを獲るために水穴の近くに罠を仕掛けた。またマスの獲れる地域には釣り糸を持っていった。男はロバを荷物の量によって一頭か二頭連れて出たが、この動物の一番の美点は、ジャガイモの皮や薪を食べてくれることだった。麓の村に馬を一頭置いていたこともあったけれど、まぐさがなくメスキートしかない沙漠に来たときに、茂みから豆をとってやっていて、その棘が好物の荷ロバを使うことを思いついたのだ。

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