ハゲワシの巣やヒナについては人伝えに聞くのがせいぜいで、誰も実際には近づくことができない。ハゲワシはシエラ南方に生息しているが、死肉が手に入らないときは、狩りをする勇気も充分に持ちあわせているようだ。羊飼いを野営地から野営地へ、狩人を丘から家へとつけまわし、その手元から獲物を奪い去ることもあるらしい。

 ハゲワシはその体躯の大きさと無法者の雰囲気で尊敬に値するが、他のハゲタカ類のように嫌われ者ぶりを周りに誇示することもない、陰気な鳥である。

 内陸部で最も嫌われ者でない死肉喰いといえば、沙漠地帯の常連、地元では「死肉ガラス」と呼ばれているワタリガラスだ。ワタリガラスは美しくて、またそういう雰囲気をもっている。習性も良く、人好きのする特性をもっている、と言われている。ショショーニ族の集落に来るよく人に慣れた一羽はいつもからかいの的で、むこうもまたそれを楽しんでいた。話すことすらできそうなこの鳥は、そこの子どもの一員みたいだったけれど、名うてのぬすっとでもあった。ワタリガラスは行き会うものたいてい何でも食べる。地面に巣をつくる鳥の卵や雛、植物の種だって食べるし、トカゲやイナゴも上手に捕まえる。コヨーテがいくところ、どんなに足を忍ばせていようとも見つけ出し、羽をバタつかせてついて行き、コヨーテが捕まえたもの、嗅ぎつけたもの何でも、この死肉ガラスの肉になった。

 同様にコヨーテも、死肉ガラスの地では、自分の「殺し」のために出動することはまずなく、巣穴を出ると空を見上げて、どこにやつらはいるのかと探す。風の強い朝、遮るもののない平坦なメサの上で、コヨーテとワタリガラスの一組が無関心を装いつつ、相手を覗き見しているのを観察するのは暇つぶしにはもってこいのお楽しみだ。両者が互いに充分意識しているのは間違いない。一度レッドロックで、牧草地が青々した年に(死肉喰いにとっては不運な年だが)、二羽のハゲタカ、五羽のワタリガラス、一匹のコヨーテが一つの死肉を漁っているのを見た。コヨーテだけが仲間のことを恥じているように見えた。

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