九月十六日のお祝いは、毎年のものではあるが、聖餐式のときよりも準備に時間をかける。娘たち(セニョリータ)はみんな新しいドレスを、奥さんたち(セニョーラ)はリボーサと呼ばれる長いストールを新調する。若い男たちはソンブレロに新しい銀の縁飾りを加え、変わったタイ、シルクのハンカチを身につけ、乗馬靴の拍車も新しい革に替えて、紳士然としている。庭ではトウガラシが赤くなり、ウズラの若鳥が「クイダード」(気をつけて!)と鳴いていて、ドスドスという挽き臼の音が、ブドウ棚の奥から聞こえてくる。そこでは陽気な年配のおかみさんたちが、手慣れた手つきでタマーレ(チリ味のひき肉をトウモロコシの皮で包んで蒸したもの)用のトウモロコシを挽いている。

 よその土地からやって来た学校の先生は、九月一日から授業を始めようとするけれど、ラス・ウバスでは、カストロもガルシアもロメロもお祭りや闘鶏のことで小さな頭をいっぱいにしていて、十六日が過ぎるまではとても授業にならない。これはメキシコ全土で、自由と解放が声高らかに叫ばれたメキシコ独立の記念日なんだ、ということをよそ者は知る。「ビバ・ラ・リベルタード!」と通りで誰かが叫べば、家の中から、ブドウ棚の奥から「ビバ・ラ・メヒコ!」の声が返されて、夜中にその声で目を覚ますかもしれない。日の出には、銃殺されたマクシミリアン皇帝の悲劇を忍んで、銃が発砲される。そして音楽が、誉れ高い国歌が歌われ、メキシコの大旗が、ちっぽけなラス・ウバスの名ばかりの広場にするすると上げられる。パイン・マウンテンを昇る太陽が、ブドウ園や家々を照らす前に、旗の中央の「モンテスマの鷲」にあいさつをする。そして一日は大きな歓声で始まる。少しして独立宣言が読み上げられ、式辞が万歳の声に包まれる。町中の人々は一張羅に身を包み、馬が泡ふき拍車が血に染まる馬乗りの見せ物があり、闘鶏も行なわれる。

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