13.グレープ・ヴァインズの小さな町

西部には今でもこんな場所がここそこに残っている。ウズラが「クイダード」とスペイン語で鳴き、町の誰もがやわらかな声で話し優しく接するところ、どんな料理にもトウガラシが入っていて、七月四日のアメリカ独立記念日より九月十六日のメキシコ独立革命を祝うところが。エル・プエブロ・デ・ラス・ウバスはまさにそういう町。その町がどこにあるか、どうやって行くのか、わたしの口からは教えられない。トゥーレアリ湿原のサギのねぐらならご案内するけれど。町の背後には山の頂きが一つあって、アメリカカラマツの森の上で、赤く連なる山腹の上で、きらりと光っている。赤い丘の斜面は谷の方になだらかに下り、そこからシエラの山並みに向かって波を打ち上げるように急坂が登りつめている。

 グレープ・ヴァインズ地区の下の方は、河岸の草地やトゥーレアリ湿原の方に下っていて、ラス・ウバスへの近道としてよく使われている。ラス・ウバスの町はほの暗いブドウの茂みの下に、ハコヤナギの丸屋根の下に隠れていて、ざわめくミツバチの巣箱のようだ。ここには耕作地がいくつかあって、小川の水を水門でせき止めて村の堰に溜めていた。上流に行けば、アラストラ(ロバに挽かせる鉱石粉砕器)のうなり声が聞こえてくる。野生のブドウは柳のところから始まって、ブドウ棚や木々の屋根を伝い、果樹林のところまで覆いつくしていた。

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