12.空の乳飲み児たち

嵐について知りたいなら丘陵地がいちばん。あなたの頭上ではあらゆる天候が起きうるわけだけれど、それについてよく知っていれば恐怖感は減るはず。考えてみれば、災害を引き起こす嵐というのは、海上、砂地、平原など平らな所で起こるもの。そこでは何が起ころうとしているかの兆ししか感じられない。世界の果ての神々が出会うところから昇ってくる、創造主の気配のようなものだ。でもひとたびそれが破裂すれば、あなたが逃げ隠れできる場所はない。ヒューヒュー、ウーウーうなるカンサス風は、閉ざされた視界にさらなる恐怖を植えつける。あなたはすっかり包囲され、根こそぎにされる草のようになり、何か自分に恨みでもあるのかとさえ感じる。ところが丘陵地帯の嵐は、もっといいことをやってみせる。水路に水をかき集め、松に肥料をほどこし、幹をねじ曲げて繊維を強くし、モミの木をマストや円材になるよう鍛える。そしてあなたが嵐の通り道の外にいさえすれば、被害を受けることもない。

 嵐にはいつも、どこを通るか、いつ来るか、どのように警告するか、といった決まりごとがあって、その仕事ぶりをきっちり見せていく。水の流れの跡があるところや、がれきの急斜面に家を建てた人は、危険な目にあうかもしれない。実際、オーバータウンのアーガス川跡のウォッシュや、キアサージの急斜面の麓の木のない湿地では、そこに建てられた家が被害を受けた。二十年もたって、アーガスのウォッシュに水が戻って家々が流され、キアサージの積雪がとどろきを上げて、麓の小屋や野営地に襲いかかったわけだが、その被害は水や雪のせいとばかりは言えない。

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