スペイン系カリフォルニア人によってつくられた近隣の町々では、地元種かどうかは別にして、香りたつイェルバブエナ(良い草)の茂みがどこでも見られる。この植物に解熱効果があることは、土地のキリスト教入信者たちによって宣教師に伝えられた。またわたしの知り合いの年配の知識豊かな夫人たちも、この植物と多肉のイェルバマンサを使って、めざましい治療をほどこしていた。多肉の方は湿地に自生し、一つの科を自身が成すことで他と識別されている。

 灌漑用水路が浅くて人の目が行き届かないところでは、水路はあっという間に、シエラの低地の泉に繁殖するクレソンに埋めつくされる。クレソンは人の出入りがあるところから近い水辺によく生える性質があり、概して人間の役に立つ種の植物であるけれど、そうやって人間に奉仕することで、水辺への侵入の言い訳をしているようにもみえる。ぬかるんだ放牧地のジョイントグラスは、ナッツの香りのする食用塊茎を持ち、インディアンからタブースと呼ばれている。山の向こうの沼地の普通のアシは(ここではPhragmites vulgaris)、とても立派な、サワサワいうアシで、矢柄や矢にすると軽くて丈夫で、甘い液汁と砂糖ができる髄をもっている。

 植物のもつ力や作用の秘密は、原始的な人々に対して最も寛大に伝授されているように見える。よそからこの手の知識を聞くことはまずない。インディアンは、植物学者や詩人の立場から、植物の見映えや関係性に興味をもつことはなく、自分に何をもたらすかにだけ関心がある。

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