花々は光と影が交互に降りそそぐ松林の風の通り道に、岩影に、泉のまわりの湿地などに吹きだまり、その配置はこの上なく美しい。百合はシダの寝床から頭を出し、オダマキはシモツケソウの上で揺れ、白いレインオーキッドは風にかしぐ草の中で震えている。湿地(雨がちの年には水の流れがあるかもしれない)は、ニセ・ヘレボルス(Veratrum californicum)の栽培地。太陽の光を通す舟形の葉を、茎を包みこむようにして葉の根元から直接出し、その上に丈高く、豪華な燭台のように枝を何本も張り出した緑っぽい花である。堂々ユリ科の植物であるのに、なぜ「ニセ」? その性質は攻撃的そのもので、初期の草汁は他のヘレボルスと同様、有害である。

 他の多くの山の草類と同様、ニセ・ヘレボルスは非常な性急さで花を咲かせる。夜になって森が静まり返ると、パチパチカサカサと葉を広げる音や花軸が押し出される音が聞こえるが、花軸がさやから完全に出きる前にすでに開花は始まっている。ニセ・ヘレボルスは限定的に自制して生え、充分な空間をとり他の植物を押しのけたりしない。思うに、もしこの湖水地域の植物相に欠点があるなら、それは植物があまりに多いということ。キアサージ峡谷からのものだけで三百種の植物があるわけで、もしその中に湖水地域の植物のすべてが入っていないなら、残りの植物は他からやってきたことになる。

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