蜂の海


わたしは蜂の海のなかに
立っている。どこからやって来たの?
宙に浮かんで、動かない蜂たち
突然、右に行ったかとおもえば
左に飛んでいく。自分たちだけの
秘密のゲームをしているみたい
どんなルールなのかしら? ここに、いま
いる以外には?
花や葉っぱから甘い汁を吸うこと?
天国のハーモニーで結ばれて
千もの群れになって、一匹が
別の一匹と会話をかわす
わたしは何気なく目を上げて
どこか彼方を見ているふりをする
隣りの家に住んでいる兄さんは
何でも恐がる。なかでも虫は
恐怖の対象
もくじ
Contents
兄さんは立っているところから、こちらを
見ることもできない
わたしは無限に広がる蜂の海に
からだを沈める
彼の小さな息子は
虫からたくさんの恩恵を受けている
でもその父は
庭に毒を撒きたいと思っている
この海を殺すのだ
わたしのひじのところを、黒いアリが歩く
プラ・ラーフはこのあたりのどこかにいる
わたしは祈りをささげる。蜂をお守りください
兄さんが二度と蜂たちを目にしませんよう