陶器


いくつかの部屋の片隅の
引き出しの奥の方に
長いことしまわれたままの
母が誰にも触らせていない
山ほどの陶器がある
少なくとも12個の割れた
カップを見つける
焼かれてファイアンス(錫釉)がかけられた
ドイツ人のヨッヒェンが
ずっと昔に残していったもの
その間々には
マイティリーの皿と碗
クレアが置いていったもの
小さなエッグスタンドとショットグラスも
そこにはまじっている
母があがめていた
フランス人言語学者がジュネーブから持ち込んだ
その人はここに20年前住んでいた
わたしたちはその人がいた記憶を
今も持ち続けている
もくじ
Contents
そして今、わたしは心を決める
壊れた碗を
外に連れ出すときがきた
わたしのジャカランダの木の下の
れんがの壁を飾るのだ
庭の装飾にするのだ
わたしたちはずっと前に
住んでいた人たちの
記念碑をつくるわけじゃない
彼らが残していったもので
その人たちを解き放とうとしているのだ
永遠の庭という考古学のふところに