適応か消滅か
まわりを見回せばみまわすほど
科学に守られた研究所育ちは
ありのままの自然に負けているように見える
わたしたちがさげすむ発育の悪そうな
背の小さな植物たちに
でも節くれだった手のなかに
その命の種を握っているは誰なのか
いのちの種
濡れて青々した葉っぱが
開く、向こう見ずな雨に
押し広げられるようにして
雨の連打に耐えられないものは
色あせて死んでしまう。合成種の
研究所で交配された外国種の種
甘いことが約束された
高品質のトマト
ジャックの豆の木みたいに
高く、高く育ち
そしてしみが出て
色あせ、しおれ、だめになる
水のやり過ぎだろうか
でもこれが新しい世界
氷河が溶け
雷雨がわたしたちを
水浸しにする、そういう世界

生き残るのは
雑草のような種、危機にあまり
さらされないもの
もっと大きなクモ、異様に活発なアリ、
巨大な蚊で埋めつくされた気温の上昇した世界を
受け入れるものたち
もくじ
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