南米新世代作家コンピレーション

マルケスやボルヘスの孫の世代にあたる、1970年代~1990年代生まれの南米の作家たち。彼らの最近の作品を集めて日本語訳した、あまり例のない画期的な文学選集。
------------------------------イギリスの文芸誌GRANTAや、NEW YORKERに掲載された短編小説を多数収録!--------------------------------


(1)
レプブリカとグラウの交差点


表紙と裏表紙
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(2)
 クエルボ兄弟

 
  表紙と裏表紙
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発売日:2015年4月
本のサイズ:12.7×20.3cm
ページ数:114ページ、横組
言語:日本語
ISBN: 978-4-901274-37-1
版元:葉っぱの坑夫
販売場所:amazon.co.jp、amazon.com、amazonヨーロッパ、CreateSpace他

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収録作品:

エボ・モラレス・・・・・・・・・リカルド・リジエス(ブラジル)

ユタにも山はある・・・・・・・フェデリコ・ファルコ(アルゼンチン)

気持ちのいい暮らしの情景・・・アンドレス・レッシア・コリノ(ウルグアイ)

レプブリカとグラウの交差点・・・ダニエル・アラルコン(ペルー/アメリカ)

最低賃金で六ヶ月・・・・・・アンドレス・フェリペ・ソラーノ (コロンビア)

訳者あとがき・・・・・・・・・・・だいこくかずえ





エボ・モラレス

世界チェス選手権に挑戦しようとしている主人公は、ある日空港でポンチョ姿の奇妙な男と出会い、親しくなる。のちにテレビで、その男がボリビア大統領になったとわかる。チェスの試合でロシアやヨーロッパに出向くたび、そこがどこの空港であれ、主人公はエボ・モラレスの姿を追い求めるようになる。現実か幻想か、正常か錯乱か、サンパウロ出身の作家によるおかしくも悲しい物語。

リカルド・リジエス:1975年、サンパウロ生まれ。ブラジル出版界の最高権威ジャブチ賞をはじめ多くの賞にノミネートされてきた。イギリスの文芸誌Grantaのブラジル文学特集号(2012年)で、期待の新世代作家の一人に選ばれる。最近の長編小説としては、「O Céu dos suicidas(自殺天国)」(2012年)「Divórcio(離婚)」(2013年)がある。


ユタにも山はある

アルゼンチンの田舎町に住む16歳の女の子ククイは、ある日、無神論者になる決心をする。神さまはいない、と宣言。しかし町に布教にやって来たモルモン教徒の金髪碧眼の青年に、一目惚れしてしまう。仲良くなりたいがために、ククイは聖書を読んだり、青年の後をつけまわしたり、なんとか取り入ろうする。エネルギーありあまる、夢多き16歳の恋の行方は?

フェデリコ・ファルコ:1977年、アルゼンチン内陸部のヘネラル・カブレラに生まれる。短編小説集に「222 patitos(222匹のアヒルの子)」「00」(共に2004年)「La ora de los monos(サルの時間)」(2010年)、詩集に「Aeropuertos(空港)」「aviones(航空機)」(共に2006年)「Made in China」(2008年)がある。


気持ちのいい暮らしの情景

ウルグアイの高級リゾート地カラスコに住むガールフレンドをもつ、日系の青年タナカ。家に遊びに行った際、その父親から古いプジョーを提供される。いい気になってプジョーを乗りまわしていたところ、事件が起きる。タナカはガールフレンドの父親と一対一で、真っ向から対峙させられる羽目に陥る。

アンドレス・レッシア・コリノ:1985年までつづいた軍事独裁政権下の1977年、ウルグアイの首都モンテビデオに生まれる。2007年、最初の長編小説「Palcante(群れ)」を出版。2008年、小説「Parir(産む)」で地方自治体の賞を受賞。イギリスの文芸誌Grantaの「若手スペイン語作家特集」(2010年)の一人に選ばれた。

レプブリカとグラウの交差点

マイコは10歳の男の子。父と母との三人暮らし。暮らしは貧しく、厳しい。学校に行っていたのは過去のこと。マイコは年老いた盲人の男といっしょに、街で物乞いをするよう父親に言われる。排気ガスでいっぱいの街角に、盲目の男とマイコは毎日立つようになる。ある日、男が仕掛けた罠にはまり、マイコの心に憎悪が生まれる。

ダニエル・アラルコン:ペルー出身の作家。1977年、首都リマに生まれる。三歳のとき家族とともにアメリカに移住。これまでに短編小説集「War by Candlelight(キャンドルライト戦争)」(2005年、PEN/ヘミングウェー賞最終候補作品)、長編小説「ロスト・シティ・レディオ」(日本語版:2012年、新潮社)「At Night We Walk in Circles(夜、円を描いて歩く)」(2013年)などを出版。


最低賃金で六ヶ月

危険地帯として名高いコロンビアのメデジン地区で、工場労働者として働いた経験をもとに書かれたノンフィクション。ガルシア・マルケスが委員長を務めるジャーナリズム基金の最終候補作品となった。潜入した工場で働く同僚たちをポートレイトし、労働の過酷さに泣きを入れながらも、なんとか全うした6ヶ月間の証となる小編。

アンドレス・フェリペ・ソラーノ:1977年、コロンビアのボゴタ生まれ。これまでに二つの小説「Sálvame, Joe Louis(助けて、ジョー・ルイス)」(2007年)「Los hermanos cuervo(クエルボ兄弟)」(2012年)を発表。2008年、韓国政府に招かれ、ソウルにて六ヶ月間の文学レジデンスに参加。そこで現在の妻と出会い、今もソウルに居住する。









表紙の写真:
Street Art of Bogotá by Jack Zalium, taken on June 28, 2011 (Creative Commons)
Jack, Happano really really appreciate you and your fantastic photos!!!





南米はグラフィティの盛んな地域。この二つのストリートアートはコロンビアの首都ボゴタのものです。flickrで「Bogota」と引いただけでグラフィティが出てくるほどの人気。またブラジルには、双子の兄弟Os GêmeosやBoleta、女性アーティストのNinaなど、グローバルに知られるグラフィティ・アーティストがいて、サンパウロはその中心的な都市と見られています。
※画像をクリックすると、大きなサイズでご覧になれます。






  
         
発売日:2015年4月
本のサイズ:12.7×20.3cm
ページ数:134ページ、横組
言語:日本語
ISBN: 978-4-901274-38-8
版元:葉っぱの坑夫
販売場所:amazon.co.jp、amazon.com、amazonヨーロッパ、CreateSpace他

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収録作品:
象・・・・・・・・・フェデリコ・ファルコ(アルゼンチン)

ハッピーバースデイ・・・・・・・ルイサ・ガイスラー(ブラジル)

素晴らしき四人・・・ファビアン・カサス(アルゼンチン)

毎週火曜に・・・・カローラ・サアヴェドラ(チリ/ブラジル)

エマ夫人の冒険・・・・・・フェデリコ・ファルコ(アルゼンチン)

クエルボ兄弟・・・・・アンドレス・フェリペ・ソラーノ (コロンビア)

訳者あとがき・・・・・・・・・・・だいこくかずえ





町にサーカスがやって来た。子どもたちは興味津々。団長の息子が地元の学校に通うことになり、生徒たちはその子を取り囲む。しかしきつい眼差しをした内気な男の子は、奇人変人扱いされるのを嫌って口をきかない。ある朝、クラスの女の子が走ってやって来て、団長の息子にいきなりキッス! 男の子は去ろうとする女の子の髪を引っ張って、女の子を飲み込む勢いで大きく口をあけてキスを仕返す。すぐに学年じゅうに噂が飛び交いはじめた。

フェデリコ・ファルコ:1977年、アルゼンチン生まれ。短編小説集に「222 patitos(222匹のアヒルの子)」「00」(共に2004年)「La ora de los monos(サルの時間)」(2010年)がある。イギリスの文芸誌Grantaの「若手スペイン語作家特集」(2010年)の一人に選ばれた。


ハッピーバースデイ

ソフィアとジュリアはいとこ同志。小さな頃からいっしょに遊んできた。ソフィアが思うに、ジュリアは繊細すぎる。少し前に起きた出来事のせいで、ジュリアは体重をかなり落としていた。学校にも来ない。そんなジュリアの誕生日に、ソフィアは頼んであったケーキを取りにベーカリーに行く。色に色を重ね、色とりどりのツブツブの飾りにおおわれた、とても可愛らしいケーキだ。

ルイサ・ガイスラー:1991年、ブラジル南部リオグランデ・ド・スル州のカノアスに生まれる。19歳のとき、デビュー小説集「Contos de Mentira(ニセ短編小説集)」で2010年度SESC文学賞を受賞。翌年引きつづき、「Quiçá(多分)」で長編小説部門でも受賞し、さらに同作品で2013年度ジャブチ賞の最終候補作品となる。2012年、イギリスの文芸誌Grantaの「ブラジル若手作家特集号」の一人に選ばれる。


素晴らしき四人

父親はいないけれど、「グラマーの典型の悩殺タイプ」とみんなが言うママをもつボク。ママのもとに現れるたくさんの男たちがいて、その人たちとボクはしばし付き合うことになる。ママがお払い箱にする日が来るまでは。

ファビアン・カサス:アルゼンチンの詩人、小説家、ナレーター。1965年、ブエノスアイレス生まれ。1998年にアイオワ大学の国際創作プログラムに参加。小説に「Los Lemmings(レミングス)」(2005年)「Rita viaja al cosmos con Mariano(リタはマリアノと宇宙を旅する)」(2009年)、詩集に「Horla City y otro(オルラ市と他の町)」(2010年)、エッセイ集に「La voz extraña(見知らぬ声)」(2014年) などがある。


毎週火曜に

ワタシは毎週火曜に、オターヴィオのもとを訪れる。いろいろ訊かれて、たくさんの話をする。オターヴィオはワタシがウソをついても気にしない。ウソというのは、真実の別の形だとオターヴィオは思っているからだ。ワタシは映画館で出会った男の話をする。恋をしてしまったらしい、と言う。オターヴィオはさまざまな質問をしてくる。ワタシが愛人のジュリオとどれくらいセックスするか、とか。

カローラ・サアヴェドラ:1973年、チリ生まれ。子供時代にブラジルに移り住む。小説に「Flores azuis(青い花)」(2008年)「Paisagem com dromedario(ヒトコブラクダのいる風景)」(2010年、Rachel de Queiroz若手作家賞受賞、ジャプチ賞最終候補作品)「O inventário das coisas ausentes(紛失物リスト)」(2014年)などがある。「Flores azuis」は2015年3月、ドイツ語版が出版された。


エマ夫人の冒険

エマ夫人は一人暮らしの未亡人。公園に面した建物の最上階に住んでいる。その公園には動物園があり、アパートのベランダからは、虎の檻が見える。ある日、エマ夫人はメス虎が地面に倒れているのを目撃する。係員がクレーンで虎を運びさった。いったい何が起きたのか。エマ夫人は麦わら帽子をつかむと、大急ぎで入ったことのない動物園に向かう。

フェデリコ・ファルコ:1977年、アルゼンチン生まれ。短編小説集に「222 patitos(222匹のアヒルの子)」「00」(共に2004年)「La ora de los monos(サルの時間)」(2010年)がある。2009年、ニューヨーク大学でスペイン語創作科の修士号を取得。現在アルゼンチン、マドリード、ニューヨークを拠点に活動している。


クエルボ兄弟

「オオオニバス」「街に漂うガソリン臭」「ヴィニシウス」「ラジオ・オデッサと死んだ修道女」の四つの部分からなる中編作品。語り手のぼくが通う学校に、クエルボという名の兄弟が転校してきた。醜いとは言えないが変わった風貌の、異質なムードを漂わせる火星人のような二人。クラスメートたちは、二人は同性愛者だという噂を広める。クエルボ兄弟には親がなく、廃墟のような英国風屋敷に祖母と住んでいた。語り手のぼくは、ひょんなことで兄弟にギターのレッスンをすることになり、その屋敷に足を踏み入れる。そしてこの風変わりな二人の罠にはまったように、心を絡め取られていく。1990年代までつづく街中の爆破事件、戒厳令や灯火管制など、コロンビアの社会・政治不安の時代を背景に映している。(小説「Los hermanos cuervo」からの抜粋)
サンプルテキスト

アンドレス・フェリペ・ソラーノ:1977年、コロンビアのボゴタ生まれ。これまでに二つの小説「Sálvame, Joe Louis(助けて、ジョー・ルイス)」(2007年)「Los hermanos cuervo(クエルボ兄弟)」(2012年)を発表。危険地帯として名高いメデジン地区で六ヶ月間、工場労働者として働いた経験をもとに書かれたノンフィクション「Seis meses con el salario mínimo(最低賃金で六ヶ月)」(2007年)で、ガルシア・マルケスが委員長を務めるジャーナリズム基金の最終候補作品となる。
       



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