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予想外の万華鏡、それはインド

The unexpected kaleidoscope that is India By 黄向阳 / Huang Xiangyang (China Daily)
China Daily: 2013-02-28 07:37

インドはわたしにとって、親しみとと得体の知れなさと両方備えた、好奇心そそられる国だった。

親しみをもつ理由は、ボリウッド映画で見たインドの歌やダンスのせいだ。「アワラ」とか「キャラバン」など若い頃に見た映画、「3バカに乾杯」といった最近の映画はいつも、わたしの幸せの源泉だった。

得体の知れなさの理由は、インドについての切り刻まれた情報を明確な一つの絵にするために、寄せ集めることができたためしがないからだ。新たなる経済勢力として(IT関係と堅固な民間セクターの成長で)、中国に追いつこうとインドが日夜変化しているせいなのか、それとも今も抱える多大な貧困や、どんな差し迫った問題も無為なものにしてしまう汚職や腐敗で動きがとれないからなのか。

直接その国を見、人々や風景、文化に触れて、その答えを知りたいという衝動に駆り立てられて、旧正月の一週間の休暇に、わたしと妻はニューデリーに向かうエア・チャイナの乗客となった。

タイミングはこれ以上悪いことはあり得ないものだった。出発の直前、ニューデリーの市バスでの集団強姦事件が、新聞のトップ記事になっていた。テレビの中央電視台では、ニューデリーを「強姦の首都」と呼んでいた。親戚や友人たちから、安全性や衛生上の問題その他もろもろのあり得る危険を考慮して、旅立つ前に考え直してはどうかという善意のアドバイスが繰り返されたのは、驚くことではない。

というわけで、わたしたちのインドへの旅は、冒険のような感じで始まった。

詐欺に会わないため、全日程に車を使うことにした。頼んだ運転手の英語の能力は芳しくなかったが、わたしたちがどこにいつ行きたいかは、何とか理解した。ニューデリーでの最初の二日間は、歴史的名所や木々や鳥を見物して問題はなし。それでその後の日程も、うまくいくことを期待していた。

三日目、世界遺産のアグラ城塞へ行く途上、運転手は車をとめて見知らぬ者を同乗させた。それは歴史専攻の大学院生だという若い男で、わたしたちのその日のガイドを務めるためにやって来たのだ。そんなサービスは頼んだ覚えがない。運転手が勘違いしたに違いない、と思ったが、「専門家の知識で旅を豊かなものにしたい」という熱心な若い学生に、「結構です」と言うのは失礼な気がした。それに名所の案内料はそれほど高いものではなかったし(500ルピー:約千円)。それで頼んでみることにした。

要塞を訪ねてインドの歴史をざっと学んだのち、わたしたちはインドの伝統的な手作りじゅうたんを見るために、その作業場に連れて行かれた。これもこちらの旅行プラン外のものだ。しかし案内役がこちらを手厚くもてなすので、無礼なことはしたくなかった。

次に起きたことはまあ成り行きと言おうか。案内人はわたしたちに次から次へとじゅうたんを見せ、何か買わなくてはと思わせるよう仕向けた。もっと負けさせるべきだったとわかったのは、あとになってから。定価売りの店でもっと安く、似たようなものを売っているのを見つけたのだ。でもじゅたんの作業場では、交渉して負けさせるのは、何かやましいことのような気がした。それは「このじゅうたんの品質を保持するには、作る人が一ヶ月間、休みなく懸命に働く必要がある」と言われたからだ。

翌日、わたしたちは運転手にもうガイドはいらない、とはっきりと言った。それでも様々な厄介なことは続いた。観光名所に着いてわたしたちの車がとまるたび、「免許をもった」ガイドたちがわたしたちの元に群がった。何とか案内役を買って出ようと、うるさく寄って来て、わたしたちは恐怖にかられて逃げ出すはめに。運転手の方も、懲りずに「ちょっと見るだけ」と言ってあれこれ店に連れていく。わたしたちは「心の温かい」人たちにも出会った。場所の案内をしたり、写真を撮ってくれたりしたけれど、チップを要求されて、いらぬ親切だったと気づくことにはなったけれど。

公平に言えば、彼らが要求した金額は決して大きなものではない。中国と同じように、インドの安い労働力には終わりがないように見える。インドでは、わずかなお金を手に入れるためにあらゆる手段を使って、押し合いへし合いしているたくさんの人間がいる。ただし中国よりも、もっと死に物狂いのやり方で。2009年に行ったラオスでは、こういう必死さは見られなかった。インドより一人当たりの国内生産が低いにも関わらず。たとえばジャイプルで、わたしたちは50ルピーでリキシャーに誘われて乗ったが、あとになって一人50ルピーだと言われた。

こういった取り立てにも関わらず、素晴らしい旅だった。様々な音や色に溢れた圧倒される体験ができた。見るべき場所はたくさんある。記念碑や宮殿はよく保存されていて、中国にたくさんある歴史を再現した名所旧跡を安っぽく感じさせた。買うものもたくさんある。様々な織り方、色、デザインのショール、じゅうたん、タペストリー。たくさんの味わうべき食べものも。ベジタリアンにもノンベジタリアンにも合う、ナンやロティ、チャパティとともに食べる、広範囲におよぶ多様な料理の数々。わたしたちはギャングに襲われることもなかったし、身の安全に関していかなる恐怖も感じることがなかった。唯一パニックに陥ったことと言えば、ニューデリーの銀行で、ATMの機械にバンクカードが飲みこまれてしまったときくらいか。銀行員が冷淡にも、取り出すのに二、三日かかります、と言ったあのとき。

実際、そこまで長く待たされることはなかった。わたしが強く言ったので、支店長がATMの技術者を呼んで、一時間後にはわたしのカードは戻ってきた。

とはいえ、わたしは200ルピーをチップとして払うはめになったのだが。



オリジナルテキスト:The unexpected kaleidoscope that is India by 黄向阳 / Huang Xiangyang (China Daily) 
日本語訳:だいこくかずえ


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