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一、二/你、三、好

炭坑文学、逸材の作家

Mining literary material by 杨光(Yang Guang / China Daily)
China Daily: 2012-09-20 13:36
元坑夫で短編小説の名手、刘庆邦(Liu Qingbang)は現代中国の都市と地方の分離を巧みに書き表す作家だ。

もしあなたが中国のどこかの炭坑地域で、刘庆邦の友だちだと自己紹介したら、そこの人々はあなたに一杯の白酒を差し出してもてなすだろう。作家の王安忆(Wang Anyi)は、山西省の炭鉱を旅しているときに、それを体験した。

元炭坑夫の作家、刘(リウ)は、これは40年近く前に作家となって以来の、最高の賛辞であると語っている。

61歳になるこの作家は、「短編小説の王」と称賛され、作家仲間たちは刘(リウ)の作品を教科書と崇めている。彼の多くの作品の主人公は坑夫である。

「作品の多くの主題、人間と自然であるとか、人間と死、男と女といったものは、暗く湿った地下の中の話として展開します」と彼は言う。

たとえば、老舍(Lao She)文学賞を受けた中編小説「神木」は、人間の本性の葛藤をくっきりと表わした作品で、映画化された「盲井(Blind Shaft)」は、2003年ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した。

流れ者の犯罪者ソン・ジンミンとタン・ザオヤンは、詐欺で手にした金で生計をたてている。仕事を探しているうぶな人間と知り合いになって、炭鉱にいい仕事があるともちかけるのだ。

いっしょに鉱山のシャフトに降りていき、かもの男を殺し、事故であったかのように見せかけて、炭鉱主からその分の報酬を受けとる。ところが新たなかもである、16歳のユアン・フェンミンが現われたとき、状況は収拾のつかないことになる。

刘(リウ)は、河南省沈丘の田舎の村で育った。不毛の平原での生活は厳しかった。子ども時代、思春期を通じて、絵本をたまに見る以外は、本を読む機会に恵まれなかった。

文化革命(1966年〜1976年)の時期、刘(リウ)は1966年後半から1967年初頭まで、元主席毛沢東の思想を広めるために、学徒動員の何百万もの紅衛兵の1人となり、国じゅうを旅した。

都市の繁栄を目撃した刘(リウ)は、田舎暮らしはもうたくさんだと心を決めた。しかしながら軍隊に入る努力は実を結ばず、それは父親が反革命分子として糾弾されていたためだった。

中学校を出ると、野に戻り働かなければならなかった。1970年、地元の炭鉱が労働者を募集したとき、刘(リウ)はその機会をとらえ、坑夫になった。

彼がものを書きはじめたのはそれからだった。地域の放送局のために、坑夫の生活についてのニュース記事を主に書いていた。1年間、地下で仕事をした後、炭鉱支局の宣伝部門に席を得たのは、彼の書く才能のせいだった。

「炭鉱で仕事することで、わたしは苦行のような世界を見る機会を得ました」 そう刘(リウ)は回想する。「同僚坑夫たちを見ていて、自分の無意味さ、存在価値のなさを実感しました。自分が耐えてきた苦難は、何ももたらさなかったのです」

刘(リウ)は1978年に北京に移り、石炭業界の新聞で記者と編集者を務めた。2001年、彼は北京作家協会に所属する、職業作家となる。

中国を理解するには、中国の農夫を知ることが必要だと言う人がいるが、刘(リウ)によれば、中国の農夫を理解するには、中国の坑夫を知ることが必要だ、ということになる。

多くの坑夫たちは、自分の畑を離れてやって来た農夫で、そこでもっと金を稼ごうとした、と刘(リウ)は解説する。多くの鉱山は都市と田舎の境界地域にあり、そこの暮らしは、都市と田舎両方の習慣の混ざりあったものだ、とも。

刘(リウ)は今でも、年に何ヵ月かは炭鉱地域を訪ねる。「地下の湿った空気と、機械のうなる音を聞いていると、昔の記憶が呼び覚まされます」と言う。

首都北京に30年以上も暮らしていながら、一度は逃げだした田舎が、今、自分の感情を激しく揺さぶる、と言う。

「わたしはあの草原の穀物や野草に、そして木の皮にさえ育てられた者です。あの地のあらゆるものが、わたしの血管を流れる血となりました。自分の鼓動を感じるたびに、あの地がよみがえるのです」

2011年より、刘(リウ)は北京に住む子守りたちについての短編小説シリーズに取り組んでいる。

どうやったら現代北京の都市生活を描くことができるか、ずっと考えつづけてきたという刘(リウ)。子守りたちを選んだのは、彼らが大きな集団を成していること、そして人間の本性に対して敏感であるからだと言う。

「都市と田舎の分離は今もあります」と刘(リウ)。「田舎出の子守りたちと都会の雇い主の間で起きる衝突は、中国の変革期における日常的な対立を映し出しています」

今年の終わりに、陕西省にある炭鉱を訪ねる計画があるという。次の小説の準備のためで、8年前にガス爆発で死んだ坑夫たちの家族の物語を書くつもりだと言う。



オリジナルテキスト:Mining literary material by 杨光(Yang Guang / China Daily)
日本語訳:だいこくかずえ



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