マリカはわたしの目の前にいた。ひどく気まずかった。年の違いのせい? 47歳の男と20歳そこそこの女の子だから? いや、そうではあるまい。でも彼女になんといったらいいのか。マリカが近づいてきた。ふたりとも脅えていた。「したい?」 マリカはそう切りだし、わたしは首をふった。この奇妙な客の態度に驚いたふうではなかった。
 「ぼくは話がしたくて、、、、」 わたしはつぶやいた。「その、、、君と。ぼくは、その、、ぼくは、、そういうつもりじゃ、、」
 「寝るつもりじゃない?」 マリカは微笑みながら言った。
 「いや、その、そうなんだ」 わたしはベッドに腰をおろして言った。マリカもわたしの隣にすわった。

 ぼくらは長いこと話をした。マリカはハンガリー人で、フランス語の学生だった。娼婦のアルバイトで学費を稼いでいた。両親は生活するのに精一杯で、長女の勉学を「援助」する金がなかった。マリカは二十世紀初頭のフランスの詩人たちについて、修士論文を書いていた。どこの大学で? ハンガリーの? ルーマニアの? マリカは学校についての詳細を言いたくないようだった。ぼくもそれ以上聞かなかった。S市で詩の催しがあると聞いて、ここにやってきて、よりましな「食べるために身を捧げる職業」(彼女の言葉を借りれば)に従事するため、友だちからこのひどくみじめな部屋を借りうけたのだった。

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