9時になって、いや2100時になって、わたしは夕食会の席で題目となった「作家にとってやましさとは」の議論を抜けだし、主催者たちの前からなんとか姿をくらました。「わたしに何かやましいところは?」 作家として? それとも男として? いや何とも言いがたい。たぶんその両方だ。ヴァシーレのわたしへの態度にはどうもひっかかるものがあった。いや当然だ、わたしにそれを非難することはできない。1週間前からヴァシーレはわたしのために、出版社との約束を取りつけたり、S市のアートセンターでフランス現代文学についての討論会をフランス語の先生や学生を招いて開催する企画を進めてくれていた。なのに、わたしはヴァシーレを避けている。

 わたしは悪名高い広場の方角に足早に向かった。9月のさわやかな空気の中を、娼婦たちがぶらぶらと歩きまわっていた。わたしに目を向ける者はいなかった。やっとマリカの姿が目にとまった。心臓が早鐘を打つように鳴った。マリカはわたしの方に飛んできて、手をしっかりと握った。「きっと来てくれると思ってた!」 マリカは嬉しそうにそう言った。他の客にするような態度で近寄ってこなかったことに、心から感謝した。

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