わたしは黙っていた。そして唐突に、しゃべりだした。
「マリカ、ぼくの住所を置いていこうか。それとも君のをくれるなら、勉強に役立つ本を送るよ」
マリカの顔はすぐ近くにあった。わたしの目をじっとのぞきこんでいた。琥珀色の目。マリカは一言ふたこと、見知らぬ言葉でしゃべった。ハンガリー語? わからない。部屋の半分は影の中にあった。わたしの心も同じだった。マリカの手がわたしの手にすべりこんできた。わたしの肩に頭をのせ、じっとしていた。とても静かに。わたしもじっとしていた。時間が止まっていた。このまま永遠にこうしていられたならと思った。だれがわたしたちを見つける? 死?

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