玄関の呼び鈴が鳴った。けたたましく、無遠慮な音で、混乱した思考は中断された。見た目、Gは変わった様子はなかった。すらりとして、くせのない茶色の髪を無造作に伸ばし、広い額にはらりと垂れた前髪が、鼻先にのせた眼鏡まで流れていた。
 二人はぎこちなく向き合い、目を合わせることなく、間の悪さの中に立っていた。握手する際も、Gはぼくの手を遠慮がちに握った、ように感じた。
 「そうか、こういうところに住んでいるんだ……」 あたりさわりのない口調で始め、事の糸口をつかもうというつもりだろう。こちらが口火をきるのを待っていることは明らかだった。が、待つことこそ、ぼくの最良の選択肢。迫られているときには、我が熱望を仮面の下に隠し、素知らぬふりをするのが勝ちだ。
 ぼくはGをネズミをねらう猫のごとき目でみた。ぼくは優位に立っていた。おしゃべりを始めればとめどなく開放的になって話し続けるような輩が、いつまでも修道僧の沈黙を守れるものか。
 Gは折れて、ぼくを見つめた。Gを見つめているぼくを。Gの目がぼくの目をさぐっていた。

…………>