わたしは男の部屋についていった。ドアの前で、男は振り返ると、儀礼的にこう言った。
 「部屋、散らかってますけど。男のひとりもんはこんなものです」
 男に導き入れられた部屋は、壁一面フレスコ画におおわれていた。それはギリシアをイメージした(おそろしく趣味の悪い)もので、過剰に青い空、右手にはアクロポリス、そしてオリーブ林と岩の風景があり、太陽の光満ちあふれて、、、、。
 「どうです、いいでしょう? 三日前にちょっとした時間をみつけて描いてみたものなんですけどね」
 男は肩をすくめた。
 「どうですか、気に入りました?」
 「えええ、ええそうですね、とっても。写実的だと思います」
 「ほんとうに? あー、とっても嬉しいですよ。ギリシアを見たことはないんです。いつも版画とか写真を見て描くんです」


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