数分後、アンリは激しい興奮でのどを締めつけられたように言った。
 「すばらしかった、、、もうお帰りになったほうがいい、、、ほんとうにありがとう、、、よければまたの機会に」
 「だめ」 わたしは首をふった。アンリは驚いて、理解できないという風にわたしを見つめた。
 「どういうことです? だめとは」
 「ヴィーナスが、、、まだでしょ、、」
 アンリはぽかんと口を開けていた。ひどく驚いた風だった。
 「だけど、、、ヴィーナスは、、、本をよく見てくださいよ」
 何が載っているかはよおくわかっていた。ヴィーナスは裸同然。腰回りにわずかの布を巻いていたけれど、そんなものでは魅惑の肢体を隠しきれはしない、、。女神は誘惑しているように見えた。
 「わかってるわ、、、」 わたしはつぶやいた。アンリをじっと見つめ、微笑んだ。こめかみがドクドクといっている。何かが燃え上がろうとしている。熱波がわたしを襲う。わたしは優しく繰り返した。
 「ヴィーナスが残ってるでしょ。最後の役を果たしたいの」
 アンリは答えなかった。唇がふるえていた。信じることができないのだ。


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