<北朝鮮代表>

南アフリカ大会のちょうど1年前、2009年6月18日に北朝鮮チームはワールドカップ本大会への出場を決めた。1966年の初出場以来、44年ぶりという衝撃的な出来事だった。同じ言語、民族をもつ朝鮮半島の2国がともに本大会に出場するのは初めてのこと。アジア予選で同じグループで戦っていた韓国のパク・チソン選手は、日本の新聞のインタビューで、「いっしょに南アフリカに行けたらいいと思う」と語っていた。北朝鮮チームには、日本生まれの在日コリアン選手が何人かいる。今回主軸として出場していたのは、アン・ヨンハッ選手とチョン・テセ選手。どちらもJリーグのクラブに所属経験がある。チョン・テセはFWの選手で、残り9人が自陣に引いて守る超守備的布陣で、一人敵陣で張ってボールを待つ役割だった。感動的だったのは、ポルトガル戦でチームが前がかりの攻撃的なプレーを仕掛けてきたこと。ブラジル戦を2−1で落としていたので勝ちにきたのだろうが、結果は7−0と大量失点での敗戦だった。このグループGでは、誰も北朝鮮がグループステージを突破できるとは思っていなかった。でも本人たちは、たとえFIFAランキング105位と32チーム中最下位であっても、来たからには何か成して帰るつもりだったのだろう。現日本代表で技術委員長をやっている原博実さんの現役時代には、日本にとって勝つことが非常に難しい強豪国だったという北朝鮮だが、国家として経済的にも政治的にも厳しい状況に追い込まれたここ20年くらいの間に、サッカーの力も衰退した。44年ぶりの本大会出場が、次の挑戦につながることを願っている。

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