<コメンテーターと通訳>

スカパーのテレビ中継では、試合の前後に時間を設け、独自のプログラムを組んで流している。今回の一番の売りは、元日本代表監督のイビチャ・オシム氏をオフィシャル・コメンテーターとして招き、グラーツ(オーストリア)からの中継でいくつかの試合の論評をその場で受けていること。外国人のコメンテーターとしては、日本のスタジオに入れ替わりで、2002年の代表監督トルシエ、ブラジル、イタリア、ドイツなどの元サッカー選手やJリーグ監督などを招いている。日本人のコメンテーターとしては、海外でプレイ経験のある元選手、Jリーグ監督や海外サッカーをよく知る解説者たちがカードに合わせて呼ばれている。ハーフタイムでの論評や試合後の分析で、通訳を必要とする外国人コメンテーターを見ていて感じたのは、通訳の能力。それぞれスタイルややり方はあるのだろうが、ブラジル人のオリヴェイラ氏(Jリーグ監督)の通訳は素晴らしかった。本人の後ろに座り、しゃべる端からこなれた日本語に訳していく。ときにオリヴェイラさんの話に熱がこもり、大声を上げながらどんどん話が進行していっても腹話術師のように難なくそれを追っていく。話者と通訳がほとんど同時にしゃべりっぱなしの状態で、話の終わりだけが少しずれていた。スタジオの日本人が話していることも、その調子でどんどんポルトガル語に変換されているようで、オリヴェイラ氏はその場のやりとりの全体を充分理解できているようだった。ニュース番組でも生になると、かなり聞き苦しい同時通訳が多い中、魔術のような通訳だと思った。

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