ドキュメント<2010年南アフリカの小宇宙> サッカーW杯全試合観戦記


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2010.07.01(Turs.) 日本時間15:00

準々決勝がある明日2日までしばしの休憩。ここまでの試合で32チーム中8チームが次のステップに進んだ。ウルグアイ、ガーナ、オランダ、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、パラグアイ、スペイン。南米勢はブラジルに負けたチリ以外が勝ち進んだ。それにしても半分が南米のチームというのは、特徴的な結果だ。南米にはブラジル、アルゼンチンというW杯で何回も優勝経験をもつサッカー強豪国があり、そういう世界のトップクラスのチームと南米の国々は普段から対戦する機会が多い。それに加え、ここ最近はヨーロッパのクラブチームでプレイし、活躍する選手も増えている。また社会情勢として、21世紀に入ってから、多くの南米国がそれまでの対米追従政策を改め、新たな政権による自立性の高い国づくりをし始めている。ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ボリビア、チリなどの国々が、左派政権となった。こうした社会の変化がサッカー界やプレイヤーたちにも、何らかの良い影響を与えた可能性はある。ウルグアイ、ガーナ戦の結果が、ベスト4の勢力図のポイントになりそうな気がする。


大会20日目
2010.07.02(Fri.) 日本時間16:00

8強から4強へ。いよいよ大詰めに向かっている。オランダはそこそこの強さを見せながらも、まだ本領発揮というレベルには達していないように見える。ブラジルは乗ってきつつありそうだ。オランダが勝つとすると、どういう展開で可能なのか。ウルグアイ、ガーナはどちらもあり得そうだが、ややウルグアイが優勢か。タイプの違う選手たち、プレイスタイルなので、どんな試合になるかちょっと想像ができない。スアレス、フォルランのウルグアイ攻撃陣は乗っている。ガーナもゴアテング、ギャンが流れの中からゴールを決め出した。もしガーナが残れば、アフリカはかなりの盛り上がりを見せるのではないか。


16.00(23:00日本時間)      ブラジル 対 オランダ 1−2 (ポート・エリザベス)

SAY NO TO RACISM. 試合開始前、前大会準々決勝と同様、人種差別をなくそうという声明が両チームの主将の言葉によって発表された。世界中の人々、子どもたちが見ている前で、意思を繰り返し示していくことは大切だ。試合はブラジルが負けてみると、意外な結果という風に感じる。前半ブラジルは好調をキープしているように見え、早い時間帯にロビーニョが素晴らしいゴールをもたらした。オランダはあまりいい攻め手がなく、ブラジルペースに見えた。圧倒的に強いブラジル。やはり、と思っていたら後半の早い時間にブラジルのオウンゴールでオランダが1点を得る。スナイダーのFKのボールへの反応だった。追いついたオランダはにわかに活気づき、追加点を上げる。ロッベンのCKのボールをカイトが頭を反らしながら当てて後ろのスナイダーに送り、スナイダーがヘディングでゴール。スナイダーがおでこをペンペンとたたきながら走るゴール・パフォーマンスがおかしかった。オランダ選手の中で最も次に進みたい意欲がプレイに表れていたスナイダーだった。ブラジルはカカなどが反撃を試みたが得点できないまま終わった。後半のブラジルは強いチームには見えなかった。サッカーは不思議なスポーツだ。


20:30(3日3:30日本時間)    ウルグアイ 対 ガーナ 1−1/PK4-2 (ヨハネスブルグ/サッカーシティ)

予想以上の熱戦になった。ガーナはここまでの試合の中で一番いいプレイをしていたと思う。スピーディーでパワフルでチームワークもよく気迫があった。ウルグアイは相変わらず玉際がうまく、スタート直後は優勢に見えた。だんだんガーナもチャンスをつくるようになり、前半のロスタイム終了間際にムンタリ(伊・インテル)が意表をつくロングシュートを決めて前半終了。後半もガーナペースが続きギャンが決定機をつくるが、点を入れたのはウルグアイだった。フォルランがFKを直接決め、今大会3点目をあげる。スアレスが決定機をつくるなどウルグアイはいい攻めを見せたが得点できず、試合は延長戦へ。延長戦終了間際、ゴール前の混戦の中でアディヤのシュートをスアレスが手でボールをかき出し、一発退場。PKとなるがギャンがボールをクロスバーに当ててしまい、そこで延長戦終了。PK戦となった試合は、ガーナが3人目、4人目とGKに止められ、ウルグアイも4人目で失敗したものの5人目のアブレウがふんわりと浮かした意表をつくボールでゴールを決め、40年ぶりのベスト4進出を果たした。延長戦でPKを外しながらも、PK戦では一番目に勝負に挑んで成功させたガーナのギャン選手は、試合終了後大泣きをしていた。アサモア・ギャン、24歳、フランスのレンヌでプレイするFW。ブラジル大会でぜひまた活躍してほしい。

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